研究実績の概要 |
rプロセスは宇宙における元素合成過程の1つで、鉄より重い原子核を生成する主要な起源 であるがその詳細は理解されていない。その中で核分裂はrプロセスの終端を決めるなど重要な役割を果たす。 本研究では新たに従来の現象論的模型を超えて、ランジュバン方程式を採用した散逸揺動定理に基づく動力学模型を用いて核分裂およびそれに伴う即発中性子放出の計算を行った。実験データの存在する核種(U-233,235,236,238, Pu-239)における中性子入射核分裂データにおいて特に重要である分裂片の質量数と運動エネルギーの評価を行った結果、実験データをよく再現する結果が得られた。モデル内のいくつかの物理パラメータを調整することで従来の理論計算に比べて実験再現性が大幅に改善されている。特に原子核の形状を決定する上で重要な要素であるネックパラメータを核種ごとに変更した。 またrプロセス計算への応用に向けて、新たに中性性過剰領域の核種における核分裂計算を行った。その結果、ウラン原子核について中性子過剰領域において質量非対称分裂から質量対称分裂へと変化する、急激な分裂モードの変化を確認した。この結果は、rプロセスに関連する分裂後の核分布(質量数100から150付近)に影響を与えるものである。 新たにランジュバン計算と統計模型を組み合わせることで新たに核分裂片から放出される即発中性子放出多重度の評価、および中性子過剰領域における核分裂片質量分布の変化を調べた。統計模型には汎用核データ計算コード(CCONE)を採用している。その結果即発中性子放出多重度の実験データを再現し、実験データのない中性子過剰核の理論予測を行うことが可能となった。この結果は今後の天体核物理の発展に資するものである。
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