最終年度は主にMeerKAT観測データを用いた偏波解析の実施に費やした。MeerKATはまだ新しい観測装置であり、特に通常の較正処理に加えて追加の処理が必要となる偏波データについては、その較正に用いられるソフトウェアや、較正精度の評価基準などが十分にコミュニティに情報共有されていなかったため、MeerKATの観測運用に関わりのある専門家と密に議論しながら、まず情報収集から始める必要があった。このため当初予定をしていたX線連星SS433の偏波解析は完了までには至らなかった。本年度は別の天体の観測データをテストデータとしながら、導入したソフトウェアの動作確認、データの較正、較正結果の確認、イメージ処理、出力結果を用いた偏波解析を行い、今後SS433の観測データにこれらを適用するための下地の形成に時間を費やした。 一方で、今年度はSS433のTeVガンマ線観測に大きな進展があった。これまではHAWCによる空間分解能の低い観測イメージしか得られていなかったが、H.E.S.S.の観測により、TeVガンマ線の空間分布が明らかとなった。その結果、SS433のX線ジェットの付け根の領域で最もよく宇宙線電子が加速されている可能性が高いことが明らかになった。我々は本年度にこの領域の電波観測を行い、宇宙線粒子加速機構の解明に示唆を与える結果を得ることに成功し、現在論文執筆の準備を進めている。今後MeerKAT観測により得られたSS433の偏波観測データと結果を比較することで、本研究の最終目標である、支配的な宇宙線粒子加速機構の解明に到達することが可能であると確信している。
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