研究課題/領域番号 |
22K20388
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研究機関 | 国立研究開発法人防災科学技術研究所 |
研究代表者 |
山谷 里奈 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 地震津波火山ネットワークセンター, 特別研究員 (90964833)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | 海溝型地震 / 海底観測網 / S-net / セントロイド・モーメントテンソル解 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、海溝型巨大地震の発生域である海域で発生したマグニチュード(M)2.5以上の地震のセントロイド・モーメントテンソル(CMT)解を網羅的・正確・高精度に求めることで、海溝型大規模地震の発生前における応力場変化を調べ、地震発生機構の理解や発生予測へ貢献することである。 2022年度は、茨城沖領域で発生した中小規模地震(M2.5-4.5)のCMT解推定についての論文を出版した。また、大中規模地震(M4.0以上)のCMT解推定に向けて、S-net海底観測網での観測波形とF-netモーメントテンソル(MT)解及び3次元地下構造モデルを使用した地震波伝播シミュレーションによる計算波形を比較し、その差異を検討した。S-net海底観測網はケーブル式であるため、方位・回転角を補正する必要がある。これらの補正には、Takagi et al. (2019) を用いた。理論波形の計算には防災科学技術研究所の大型計算機を利用した。地震波伝播シミュレーションにはOpenSWPC(Maeda et al., 2017)を使用した。3次元地下構造モデルとしては、全国1次地下構造モデル(Koketsu et al. 2012)を用い、固体領域の最小S波速度を1.0km/sとした。プレート境界型の地震に対しては、F-net MT解では観測波形の振幅を十分に説明できておらず、S-net海底観測網での観測波形を用いたCMTインバージョンを行うことで、CMT解の高度化が期待できる。一方でアウターライズ型の地震では、F-net MT解では陸側と比較して海側の観測点の波形の位相がずれており、CMT解の位置の決定精度の高度化が期待される結果となった。そこで、実際のCMT解推定のために、大型計算機を利用してグリーン関数を計算した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年11月15日から2023年5月19日までの間、出産・育児により研究活動を停止したため。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の研究成果により、S-net海底観測網を用いることで大中規模地震(M4.0以上)のCMT解の高度化が期待できる結果が得られている。そこで、2023年度の前半は、実際に大中規模地震のCMT解の推定を行う。既に、解の推定に必要なグリーン関数は計算し終えているため、これを用いてインバージョン(Yamaya et al., 2022)を行う。2023年11月までに、研究成果を学術雑誌へ投稿するとともに、CMT解をカタログ化・公開する。 さらに、2022年度の後半は、堆積層補正値 (Matsubara et al. 2019)を組み込むことで、海底観測網から得られた周期0.6-2.5秒の短周期波形を解析し、中小規模地震を網羅した正確かつ高精度(±1 km)なCMT解を推定する。東北沖領域全体では約25000個と数が多いため、まずは福島沖領域に対象を限定して解析を行う。小規模地震を新たに解析することで、従来の10倍以上の数のCMT解推定が期待される。地震波伝播シミュレーションには、東京大学や海洋研究開発機構等の大型計算機を利用する。2024年6月までに、研究成果を学術雑誌へ投稿するとともに、CMT解をカタログ化・公開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
出産・育児に伴い、2022年11月15日から2023年5月19日まで研究活動を停止したため。
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