相分離とKorteweg効果を伴う流体置換現象に主眼を置き、これまでの数値シミュレーションを発展させ、実験にて補完することで、部分混和系の流体置換の特性の更なる解明を目指すために、本研究を実施している。2023年度(最終年度)では、応用を指向した実験と基礎部分の補完を目指す実験およびシミュレーション研究を行った。具体的には、多孔質媒質を模倣した実験系を作成し、部分混和系流動実験を行った。その結果、多孔質媒質での部分混和系流動は液滴形成が流路をふさぐため置換効率としては良くなるというものである。今後、より詳細な実験とモデル化による理論の説明、最終的にはシミュレーションでの実験の再現などを目指していく。また実験にて部分混和系の一般化を目指して他の系でも流動実験を行った。数値シミュレーションにて、実験と比較するためradialに成長する2成分系部分混和系の基礎をシミュレーションした。共同研究として、radialでの広がりを可能とする部分混和系VFのコードを完成させ、パラメトリックスタディを行った。その結果、相分離の状態(不安定状態のスピノーダル分解型や準安定状態の核形成成長型)によってパターンが異なることを発見した。これは実験を再現・説明できるものであり、これまでのrectilinearでの広がりでは観察・再現することができなかったものである。さらに、実験とシミュレーションで流量の大きさが界面相分離に与える影響について議論した。シミュレーションの派生研究として、化学熱力学を考慮した流動現象の理解として、fingering形成の状態遷移をエントロピー生成速度最大原理に基づいて説明できることを解明し、化学熱力学の視点を導入することでこれまでfingering形成の開始時間が測定できなかったことを解決した。
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