2023年度は,設計・製作した半頂角が7.5度の回転円錐を用いて,円錐上に生じる流れの可視化実験を行い,流れを支配する渦構造や乱流遷移位置を観察した.実験は大きさの異なる水槽を用い,流れに追従して配向するパールフレークを水に添加し,その反射光を撮影することで,渦構造を可視化し,その崩壊によって起こる乱流遷移の位置を特定した.また,水槽内で円錐を軸方向に牽引することで,相対的に軸流を流れに与え,軸方向速度が渦構造や乱流遷移位置に与える影響を評価した.結果から,軸流がある場合,円錐の回転数,局所半径で定義される遷移レイノルズ数は,回転速度と動粘性係数で無次元化された軸方向速度に強く依存することがわかった.一方で,軸流がない場合は,回転速度と動粘性係数に基づいた粘性スケールで水槽寸法を除した無次元スケールにその遷移レイノルズ数が依存することがわかった.乱流遷移前に流れを支配する渦構造は,軸流がある場合にはKohama(1984)が報告した構造と類似した円錐表面上に巻き付く螺旋状の渦構造が観察された一方で,静止流体中ではこの螺旋渦と逆向きに円錐上に巻き付く渦構造が確認された. 全体を通じて,これまで報告の少なかった細長い回転円錐上の流れの遷移点,渦構造,またこれらの軸流による影響を観察する環境が整い,定性的な流れの傾向を掴むことができた.また,流れの外部境界の影響など,これまでの境界層研究では比較的注目されていなかった乱流遷移に影響を与える要素を実験により明らかにした.信州大学での実験結果に加えて,これまで報告されている回転円錐上の流れのデータを横断的に調査し,層流相似解を仮定して,軸流中の細長い回転円錐上の乱流遷移を遠心力の指標であるゲルトラー数を用いて再評価し,遠心力が乱流遷移に重要な役割を果たしていることを示した.
|