研究課題/領域番号 |
22K20415
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
市原 稔紀 日本大学, 理工学部, 助手 (30961552)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | 3Dプリント / 数値最適化 / 逆均質化 / ツールパス / 3DプリントCFRP |
研究実績の概要 |
炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を造形できる3Dプリンタを活用して,外形形状のみならず繊維配向やハッチ間隔などのプリントパスまで最適化された高性能CFRPを成形し,構造のさらなる軽量化,高機能化を目的に研究を推進している. CFRP構造の最適化においては,CFRPが材料異方性を有していることにより外形形状を最適化するだけでは不十分であり,その内部構造において応力状態に合わせた最適な繊維配向が重要となる.3DプリントCFRPでは1mmスケールで任意の配向に繊維を配置可能であるため,従来CFRPよりも高度に最適化されたCFRPの成形が可能である.しかしながら,従来の3DプリントCFRPでは,樹脂の3Dプリント同様の一様なパターンの繊維パス配置が用いられてきた.本研究では,3DプリントCFRPのサブスケール構造を均質化する漸近均質化解析を行い,3Dプリントパスの設定と材料特性の関係を短繊維強化CFRPにおいて計算した.この材料特性を用いて,内部構造を含めた最適化手法を提案した.さらに数値的に最適化された構造から,3Dプリントパスを生成する手法を提案し,実際に最適構造を3Dプリントした.最適構造の力学特性を材料試験を通じて評価し,従来のパターンで3DプリントしたCFRPよりも力学特性が向上していることを確認した.また有限要素法の解析結果と比較することで,最適化構造を実現できているか検証した. 結果として外形形状のみではなく,内部構造まで最適化することで従来CFRPよりも優れた特性を発揮する3DプリントCFRPの成形が可能となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究目的としては,短炭素繊維強化プラスチックCFRPを対象に最適化手法を提案し,実際に最適3DプリントCFRPを造形し,マルチスケール解析の結果とバリデーションを実施することであった.この目標に対して十分な成果が得られているといえる. 均質化法に基づく外形形状・内部構造の同時最適化を実施し,得られた構造から3DプリントCFRPのツールパスを生成する方法を示した.実際に3Dプリンタを使用して最適3DプリントCFRPを成形した.力学特性を通じて,その性能がマルチスケール解析によって予測された性能とおおむね一致することを示した.ただし,ツールパス生成において,最適化時に考慮されていない欠陥が生じることがあり,この欠陥が力学特性を低下させていることを示した.この欠陥が生じにくいツールパス生成手法の提案は次年度の課題となる.以上の成果と,当初の研究計画書を比較しておおむね順調に研究が進展していると結論付ける.
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今後の研究の推進方策 |
次年度においては,今年度に実施した最適化手法を連続炭素繊維CFRPの3Dプリンティングによって実現する.しかし今年度で明らかになったツールパス生成時の欠陥は,連続炭素繊維CFRPの場合,短繊維強化プラスチックの場合に比べてさらに力学特性に影響を与える可能性がある.そこで次年度においてはツールパス生成手法に,このような欠陥が生じないようなアルゴリズムを取り入れる.また最適化計算においても,初期値依存や局所解の可能性などが示唆されたため,これらの影響を最小に抑えるアルゴリズムを取り入れる.その後,連続炭素繊維の3Dプリンティングによって最適構造を造形し,材料試験および数値解析によって構造の最適性を検証する. 以上を踏まえて,これまでにない高性能な3DプリントCFRPの設計・成形手法とその材料力学的検証を実施する.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額4200円は材料費等の価格の端数により生じた残金である.次年度では消耗品購入(3Dプリント関連の消耗品.ノズルなど)に充てる.
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