本申請では、炭化水素系ハイブリッドロケット燃料の高性能化を目指し、ロケット燃焼の特徴的な環境に対応した計測技術を用いて燃料の熱分解挙動をモニタリングし、高温・高加熱速度環境で発生する熱分解ガス成分が低分子量化することを目的としている。手始めとして,スキマーインターフェースシステムを用いた熱分解ガスのリアルタイム計測を実施した。 ・反応活性が非常に高いと予想される熱分解ガスの変成影響を十分に抑制したリアルタイムな計測技術として,有機化合物の分子イオン検出性能に優れるイオン付着イオン化質量分析計(IA/MS)と高速加熱炉をダイレクトに接続するスキマーインターフェースシステム(スキマーIF)を取り入れた分析装置内部の圧力バランスの確立および熱分解ガスの安定的な計測技術の確立を行った。事前検討で焦点を当てたヘリウムガス供給圧力:窒素ガス供給圧力=50:50の雰囲気ガス条件は測定対象である高分子材料の熱分解ガスを高強度に測定することが可能であり,このとき最も安定して検出できる高速加熱炉とスキマーIF先端の距離を見出した。 ・上述した測定装置を用いて測定対象となるパラフィン系やブタジエン系の高分子材料の急速熱分解ガスをキュリー温度(室温から急速昇温させる目標温度)1040℃で測定した。その結果,従来の低速昇温条件で得られる分子量帯より低い熱分解ガスが得られると同時に,不活性雰囲気条件下において芳香族炭化水素の発生が確認された。芳香族炭化水素の発生は従来型のキャピラリー接続型質量分析計の測定結果を支持する。 ・熱分解ガスの低分子量化を促進させる添加触媒を検討するために,まず手始めにディーゼルエンジン研究で先行されている多環芳香族炭化水素および水酸基含 有化合物を使用し,添加量とその効果について熱分析装置にて評価した。
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