研究課題/領域番号 |
22K20420
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
川村 拓史 長岡技術科学大学, 工学研究科, 助教 (80965765)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | 金 / ガラス / 電圧印加 / 陽極接合 / アルカリ金属イオン |
研究実績の概要 |
本研究では,金/ガラス間に高温下で電圧印加した際に生じる,金流入現象のメカニズム解明を検討する.特に本研究では,現象を詳細に観察するため,従来では真空チャンバ内で実験を行っていたが,大気中かつプレートヒータ上で実験を実施する.大気中で実験を行うことで,現象を高速度カメラや光弾性法によって詳細に観察を行えるようになると考えられる.金流入現象のメカニズムを解明したのち,本現象をガラスの分断加工に応用する.本加工は,化学強化ガラスを切断可能であることが予備実験から明らかになっているため,アルカリ金属イオン含有ガラスの加工への応用を目指す. 本年度は,まず実験の準備段階として,各種実験装置の購入および設定を行った.また,実験環境が整ったのち,実際に大気環境下で金流入現象に関する実験を行った.使用する電極治具等は,真空チャンバで使用していたものと同様,銅やステンレス鋼で作製して実験を行った.その結果,大気中では電極等が酸化し,ガラス内のイオン移動がうまく生じないことが分かった.また,真空と大気での実験において,実験系が大きく変わったことにより,試料の熱変形が従来よりも大きくなることが分かった.試料の熱変形により,ガラスや電極の接触性が悪くなり,うまく電圧が印加されていないと考えられる.今後は,上記のような,酸化や熱変形の影響を解消できるような実験系を作製し,金流入現象の詳細な観察を行う予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究では,金流入現象の詳細なメカニズムを解明するため,高速度カメラや光弾性法を用いて,現象の観察を行う.これらを実現するため,従来実験に使用していた真空チャンバではなく,大気中で実験可能な装置を作製し,観察を容易にする. 大気中で金流入現象を生じさせるため,ガラスを350℃程度まで加熱可能なホットプレートを使用し,金とガラスを接触させ,電圧を印加した.しかし,現段階では,大気中で金流入現象を生じさせることはできていない.これは,大気中で高温に加熱することから,電圧を印加する電極や治具などの試料が酸化し,うまくガラスに電圧を印加されていないことが原因であると考えられる.また,真空チャンバでは,タングステンヒータとプレートヒータを使用し,ガラスの上下方向から加熱を行っていた.しかし本実験では,プレートヒータによってガラスの下方向からのみ,加熱している.そのため,温度分布が試料の上下で大きくなり,熱変形が生じている.この変形によってガラスが反り,うまく電極と面接触しておらず,電圧が印加されていないといったことも,原因として考えられる. 上述のように,まだうまく現象を確認・観察できていないことから,遅れていると評価した.
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今後の研究の推進方策 |
大気中での実験の失敗の要因として,現象は試料治具の酸化と,不均一な温度分布による治具の変形が挙げられる.この問題を解決するため,ステンレスを用いた治具を作製し,治具の酸化を抑制する.また,加熱の手法を工夫し,試料全体の熱変形が,ガラスと電極の接触性に悪影響を及ぼさないように改善する. 上記の問題が解決し次第,高速度カメラや光弾性法によって,金流入現象を観察する.また,観察結果から,亀裂形成挙動の電圧・電流・温度依存性を明らかにする.また,亀裂の形成と,金の変形挙動の関係を詳細観察から明らかにする. 亀裂形成挙動の詳細が理解できたのち,実際にガラス加工への応用を検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
僅かに予算を使い切ることができなかったため,翌年分として申請した.
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