本研究では,金流入現象と呼称する,ガラスに亀裂を形成し,亀裂内に金を流入させる現象について,そのメカニズム解明とガラス加工への応用を検討した.先行研究では,真空チャンバ内で,ガラスと金を接触させ,ガラスを軟化点以下の高温に加熱した状態で,金を陽極とした電圧を印加し,その後ガラス側を陽極とした電圧を印加することで,金流入現象を生じさせていた.本研究では,金流入現象の動的観察を容易にするため,大気中で実験が可能な装置を作製した.その結果,実験前の想定通り,ガラスが十分に加熱され,電圧印加によってガラス内部に分極が生じていれば,大気中においても金流入現象が生じることを確認した.一方,大気中での実験においては,高温加熱による金属電極の酸化や,意図しない放電,ガラスの絶縁破壊等が確認され,金流入現象が生じない場合があった.そのため,大気中と真空中では,金流入現象が生じる条件が異なることが分かった.また,金流入が生じた場合においても,生じる亀裂が小さくなり,金の流入量が減少していた.これは,大気中での実験では,ガラス内に生じる分極が減少しているためであると考えられる.また,亀裂形成の高速度カメラ撮影については,亀裂発生のタイミングや位置,光学系などの影響のため,うまく撮影できていない.今後は上記の問題を解決して,金流入現象発生初期の過程について,動的観察し,現象のメカニズムを考察する予定である.
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