研究課題/領域番号 |
22K20425
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山本 道貴 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (10963225)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | ストレッチャブルエレクトロニクス / ストレッチャブル配線 / コルゲート加工 / 実装技術 |
研究実績の概要 |
本研究では,高密度な微細ストレッチャブル配線の実現のため,垂直方向に波状に加工した金属箔の上に,絶縁層を介して微細な電気配線を形成した新規ストレッチャブル配線構造を提案する.同構造を実現するため,まず金属基板上に絶縁膜・微細配線を形成した後,コルゲート加工(歯車による連続曲げ加工)によって伸縮性を有する縦波構造を付与するプロセスを検討した. 今年度はまず,金属箔/有機絶縁膜/配線の構造を作製してコルゲート加工を行い,コルゲート加工における有機絶縁膜の膜厚の影響を評価した.結果,基板に厚み11μmのAl箔を用い,モジュール0.15のインボリュート歯車を用いてコルゲート加工を行った場合,有機絶縁膜の膜厚が厚くなるほどコルゲート加工後の波の高さが減少すること,具体的には,30%以上の伸張性を実現するためには,有機薄膜の膜厚を5μm以下にする必要があることを確認した.またコルゲート加工を行う際の歯車についても数種類検討し,コルゲート加工の際に金属の歯車を用いると配線にダメージが入る確率が上がるのに対し,プラスチック製の歯車を用いることで,配線を破損することなく縦波構造に加工することが出来る確率が上がることを確認した.またフォトリソグラフィプロセスを用いた配線の微細化にも取り組んだ. さらには,本提案プロセスの応用として,Al箔上にPVDF圧電薄膜・上部電極を形成した後にコルゲート加工を行うことで,50%を超える伸張性を示す縦波型圧電ストレッチャブルセンサの作製に成功した.また,将来的に波状配線上に電子部品・センサへ実装することを念頭に,Au-Au表面活性化接合によるMEMSセンサの実装についての検討も行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,金属基板の上に絶縁膜を介して配線を形成した後,コルゲート加工によってストレッチャブル縦波配線を形成するという提案プロセスが成立することの実証,ならびにパターン付き積層膜へのマイクロコルゲーションプロセスの力学的メカニズムの解明,および微細ストレッチャブル配線の形成を目標としていた.実際,Al箔の上に有機絶縁膜・配線を形成後,コルゲート加工を行うことで,ストレッチャブル配線を形成できることを確認すると共に,コルゲート加工後に高アスペクト比を得るためには絶縁フィルムの厚みが十分に薄いこと,ならびに配線を破損しないためには歯車の材料が柔らかいことが重要であることを確認した.一方,配線の微細化については,微細配線の形成が可能であることは確認したものの,配線を微細化した際のコルゲート加工への影響・伸張性の評価等については途中であり,同検討項目についてはやや遅れていると言える. 一方,次年度に取り組み予定であった,本提案プロセスの応用等について一部前倒しで始めていることから,おおむね順調に推移していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
今年度までに,金属基板の上に絶縁膜を介して配線を形成した後,コルゲート加工によって伸縮性縦波配線を形成するという提案プロセスの検証,ならびに積層構造のコルゲート加工時の重要パラメータいついて検討を行った.次年度は,微細配線の検討・評価を進めると共に,同配線を用いた応用例としてストレッチャブルデバイス・ストレッチャブルセンサを作製することを目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、金属基板の上に絶縁膜を介して配線を形成した後,コルゲート加工によって伸縮性縦波配線を形成するという提案プロセスが成立することの実証,ならびにパターン付き積層膜へのマイクロコルゲーションプロセスの力学的メカニズムの解明に注力し、同部分に予定していたよりも時間がかかったため、微細配線を作製するためのフォトマスク用の金額、ならびに共用設備利用額が当初計画していたよりも少なくなった。 繰越金額については、次年度、フォトマスクの作製などに利用する予定である。
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