本研究では,高密度に配線できる微細なストレッチャブル配線の実現のため,垂直方向に波状に加工した金属箔の上に,絶縁層を介して微細な電気配線を形成した新規ストレッチャブル構造を提案する.同構造を実現するため,まず金属基板上に絶縁膜・微細配線を形成した後,コルゲート加工(歯車による連続曲げ加工)によって伸縮性を有する縦波構造を付与するプロセスを検討した. Al箔基板・Cu箔基板の上に厚さ2 μmのパリレン基板を形成し、その上にメタルマスクを用いたスパッタ成膜によってAu配線を形成し,その後コルゲート加工を行った.結果,50%程度の伸張性を備えた,線幅100 μm程度の微細配線の形成に成功した.また,配線の形成の際にメタルマスクに代えてフォトリソグラフィによるパターニングを用いることで,さらに細い10 μm程度の線幅の縦波型配線の形成にも成功した. 一方,同配線形成の際には,コルゲート加工前後で配線抵抗値の上昇が確認された.シミュレーション,ならびに実験より,配線抵抗値の上昇はコルゲート加工時に生じる曲げ応力によって配線にクラックが入っているためと考えられ,利用する金属箔基板厚みを5 μm程度に薄くすることで,抵抗値の上昇を低減できた.一方,金属箔の厚みを2 μm程度まで薄くするとスプリングバックの影響が大きくなり,縦波構造を形成できなかった.配線にかかる応力の低減と,塑性変形による変形を両立できる層構成・膜厚構成が重要であると考えられる. また同構造の応用として,Al箔上にPVDF圧電薄膜・上部電極を形成した後にコルゲート加工を行うことで,50%を超える伸張性を示す縦波型圧電ストレッチャブルセンサの作製に成功した.
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