研究課題/領域番号 |
22K20427
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
岡本 一輝 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (60965937)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | 強誘電体 / 薄膜 / 積層構造 |
研究実績の概要 |
ウルツァイト構造を有する(Al,Sc)Nにおいて強誘電性の発現が報告されて以来、窒化物強誘電体は新材料として大きな注目を集めている。(Al,Sc)Nは従来の強誘電体材料と比較して非常に大きな残留分極値や抗電界を示す。強誘電体メモリなどへの本デバイスの応用を考えると、非常に大きな残留分極値は従来材料では達成できなかった領域での小型化や高密度化の可能性を示している。しかしながら大きな抗電界は、すなわちデバイスで高い動作電圧を必要とすることを意味している。したがって、本材料の応用のためには抗電界を低減する手法が必要とされている。 本研究の目的は極性界面に誘起・促進された動力学的な分極反転により窒化物強誘電体の「強固な抗電界を低減」を実現することである。すでに圧電材料として社会実装されているAlN基強誘電体の低電圧駆動可能な次世代強誘電体メモリ材料としての可能性を開拓及び発展を目指す。AlN基窒化物強誘電体を用いて積層構造を作製し、人工的な極性界面の制御と通して分極反転の動力学的過程・反転挙動の理解を深める。 初年度において、反応性スパッタリングを用いたSc添加AlN強誘電体薄膜の作製を行った。単一の組成で構成される1層のみの薄膜と(Al,Sc)NにおいてAl:Sc組成比の異なる膜を積層化した薄膜の作製を行った。今後は電気特性評価を進め、積層構造と抗電界や分極値との関係性の解明に取り組む。これによりを高いPrを維持しつつ効率的にEcを低減できる多層膜構造を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までの進捗状況の自己点検による評価は、やや遅れている、である。 反応性スパッタリングを用いた手法により積層構造薄膜の作製に取り組んでいたが、その作製方法の再現性の問題により薄膜作製の進行に遅れがでてしまった。現在までに装置の成膜時にフローとして流すN2ガスの噴出口などの修理・改良を行い、再現よく薄膜作製ができるように取り組んだ。 2年目で、作製した薄膜について特性評価を行い、電気特性と積層構造との関係解明に取り組む予定である。これによりを高いPrを維持しつつ効率的にEcを低減できる多層膜構造の解明に取り組む。
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今後の研究の推進方策 |
初年度では、反応性スパッタリングを用いたSc添加AlN強誘電体薄膜の作製を行った。ここでは単一の組成で構成される1層のみの薄膜と(Al,Sc)NにおいてAl:Sc組成比の異なる膜を積層化した薄膜の作製を行った。 今後は電気特性評価を進め、積層構造と抗電界や分極値との関係性の解明に取り組む。特に積層構造の厚み比率や1層目に積層する(Al,Sc)N層の表面荒さに着目し、特性評価に取り組んでいく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
薄膜作製実験に再現性の問題から若干の遅れが生じたため、次年度使用額が生じた。 次年度の使用計画としては、遅れてしまっている薄膜試料の特性評価に必要な消耗品、例えば電気特性測定に必要なプローブや電極材料の購入に用いることを計画している。
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