研究実績の概要 |
ウルツァイト構造を有する(Al,Sc)Nにおいて強誘電性の発現が報告されて以来、窒化物強誘電体は新材料として大きな注目を集めている。(Al,Sc)Nは従来の強誘電体材料と比較して非常に大きな残留分極値や抗電界を示す。強誘電体メモリなどへの本デバイスの応用を考えると、非常に大きな残留分極値は従来材料では達成できなかった領域での小型化や高密度化の可能性を示している。しかしながら大きな抗電界は、すなわちデバイスで高い動作電圧を必要とすることを意味している。したがって、本材料の応用のためには抗電界を低減する手法が必要とされている。 本研究の目的は極性界面に誘起・促進された動力学的な分極反転により窒化物強誘電体の「強固な抗電界を低減」を実現することである。すでに圧電材料として社会実装されているAlN基強誘電体の低電圧駆動可能な次世代強誘電体メモリ材料としての可能性を開拓及び発展を目指す。AlN基窒化物強誘電体を用いて積層構造を作製し、人工的な極性界面の制御と通して分極反転の動力学的過程・反転挙動の理解を深める。 初年度において、反応性スパッタリングを用いたSc添加AlN強誘電体薄膜の作製を行った。単一の組成で構成される1層のみの薄膜と(Al,Sc)NにおいてAl:Sc組成比の異なる膜を積層化した薄膜の作製を行った。 次年度において、電気特性評価を進め、強誘電特性に関する評価とその分極反転挙動の解明に取り組んだ。以上から今後の窒化物強誘電体材料の設計に役立つことが期待される強誘電特性と分極反転の起源についての知見が得られた。
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