研究課題/領域番号 |
22K20429
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
綱田 錬 岡山大学, 自然科学学域, 助教 (40965646)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | アキシャルギャップモータ / 自動車駆動用モータ / 高効率化 / 実機検証 / 低消費電力 / 低コスト化 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,自動車駆動用のアキシャルギャップモータ(AGM)において,高性能化と低コスト化を両立することを目的とする。そこで研究代表者は,低コスト化のためにAGMに「フェライト磁石」と「丸線」を用いることを検討した。一方で,両材料はAGMの磁気装荷と電気装荷の低下を招いてしまう。しかし,研究代表者は「(1)新しい回転子構造」,「(2)固定子つば形状の最適化」を組み合わせることで,材料面での欠点を補いつつ,高性能化を実現できるAGMを提案した。2022年度は,以下の内容について研究を実施した。 ①提案AGMの試作と実機検証 初期検討として,磁場解析で提案AGMが低コストでありながら自動車駆動用モータとして高い特性を実現できることを明らかにした。その提案AGMの実機での特性を評価するため,まずは冷却機構を含めた構造,ケース,取回し線等の設計を行った。その後,特殊な工程を必要とせずに問題無く提案AGMの製造ができることを確認した。また,試験設備をセットアップし,実機検証を行った結果,提案AGMは解析同様に目標トルクを達成した。 ②市販モータとのインバータ駆動時の比較 提案AGMの有効性を明確にするために,高コストなネオジム焼結磁石と平角銅線を用いた市販の自動車駆動用モータとの比較を実施した。一般的に,モータの磁場解析では正弦波電流を入力する。しかし実際にはインバータ駆動であるため,スイッチングによる高周波電流が重畳する。そこで,回路シミュレータで両モータがインバータ駆動した際の電流波形を計算し,その電流を用いた磁場解析を実施した。その結果,WLTCモードで自動車が運転した際に,正弦波電流では両モータの消費電力が殆ど同じであったが,提案AGMは材料や構造の観点からスイッチングによる鉄損増加を抑制することができ,市販のモータよりも10%以上の消費電力低減効果があることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2022年度に計画していた「提案AGMの試作と実機検証」を順調に実施できていることに加えて,インバータ駆動を考慮した場合のWLTCモードにおける市販機との損失量比較も追加で実施できたことから,「当初の計画以上に進展している」と考えられる。進捗が順調である要因の一つに,提案AGMの構造がシンプルであり,製造に問題が発生しにくいことが挙げられる。その結果,試作段階でも大きな問題が発生することなく,進めることができたと考えられる。2023年度は,上記の実験結果を踏まえて,更なる性能向上のための検討を実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題では,自動車駆動用のアキシャルギャップモータ(AGM)において,高性能化と低コスト化を両立することを目的としている。そこで研究代表者は「(1)新しい回転子構造」,「(2)固定子つば形状の最適化」を組み合わせることで,材料面での欠点を補いつつ,高性能化を実現できるAGMを提案した。2023年度は,以下の内容について研究を実施する予定である。 ①前年度の実験結果を踏まえた改良による高出力密度化の検討 これまでに,提案AGMの基本的な特性を解析と実験の双方で明らかにした。2023年度は,これまでの実験と解析での双方の知見を踏まえて,自動車駆動用モータにおいて重要となる出力密度向上のために有効な構造を,まずは磁場解析によって明らかにしていく。 ②AGMの他構造との熱特性を含めた比較 提案AGMは円盤状の回転子を上下から2つの固定子で挟み込んだ「シングルロータ・ダブルステータ構造」を採用している。この構造を採用した理由としては,両側に固定子があるため,損失による発熱をケースに逃がしやすいことがある。これに対して,「ダブルロータ・シングルステータ構造」等は,両側に回転子があることからケースとは非接触であり,熱が逃がしにくいことが考えられる。しかし,上記の構造でフェライト磁石及び丸線を使用した場合の熱特性の差異を定量的に比較し,明らかにした例は研究代表者が知る限り無い。そこで,両構造のモータを設計し,熱特性まで含めた比較を実施することによって今後の自動車駆動用AGMの設計指針として有効となる知見の取得を目指す。
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