本研究課題では,自動車駆動用のアキシャルギャップモータ(AGM)において,高性能化と低コスト化を両立することを目的としている。そこで本研究課題の代表者は,低コスト化のためにAGMに「フェライト磁石」と「丸線」を用いることを検討した。一方で,両材料はAGMの磁気装荷と電気装荷の低下を招いてしまう。しかし,研究代表者は「(1)新しい回転子構造」,「(2)固定子つば形状の最適化」を組み合わせることで,材料面での欠点を補いつつ,高性能化を実現できるAGMを提案した。 2022年度は上記の提案構造の有効性を実機で初めて検証し,有効性を確認することができた。実機による提案AGMの有効性の検証結果についてまとめた論文がIEEE Transactions on Industry Applications(Q1ジャーナル,doi: 10.1109/TIA.2024.3371959)に掲載された。 また,同じく2022年度には提案AGMがインバータによるPWMスイッチングの条件下において,市販モータに比べてWLTC走行モードでの消費電力が約17%低減できるという結果を得ることができた。2022年度までは解析にて損失を評価していたが,2023年度に実機におけるPWM駆動時の損失増加等を評価することによって,検討内容の整合性を確認した。この内容をまとめた論文をIEEE Transactions on Industry Applications(Q1ジャーナル)に投稿し,審査を受けているところである。更に,2023年度には冷却水の温度や冷却の有無による熱特性の違いも測定したため,今後の熱特性を含めた高出力密度化のための設計に活かせる成果を得ることができた。
|