研究課題/領域番号 |
22K20430
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
呉 澤宇 九州大学, システム情報科学研究院, 助教 (40962147)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | 高温超伝導線材 / 電流輸送特性 / モデリング / 磁気顕微法 / 低電界領域 |
研究実績の概要 |
本研究では、高温超伝導テープ線材のマグネット応用の共通課題である遮蔽電流の定量化に対し、基盤技術となる素線電流輸送特性のオペランド計測とその高精度なモデリング手法を確立する。現もっとも一般的な電流輸送特性の評価法は、四端子法により、電流を印加しその電圧応答を測定する方法である。四端子法は定量性にこそ優れるが電圧の測定雑音により10-6 V/m以下の電流輸送特性の測定が困難であるため、本研究では着磁した線材近傍の磁界分布とそのダイナミクスを計測する磁気顕微法に基づいて計測する。電流輸送特性のモデリング手法も単なる経験則でなく、メゾスコピックスケールの量子化磁束挙動の統計性を考慮した物理モデルで行う。本研究の実施事項は、1.超低電界領域を含めた広い電界領域における磁界下の電流輸送特性の角度依存性の実測(2022前半)、2.ダイナミック電界制御による広範電界範囲の特性の実測(2022後半~2023前半)、3.量子化磁束挙動の統計性を考慮した物理モデルによるパラメーター抽出(R5)である。2022年度では項目1と2を実施予定であった。具体的な研究実績を以下に示す。
(1)極低温5 K、磁場強度0~3.5 T、超低電界領域を含めた広い電界領域10-5~10-11 V/mにおける垂直磁界角度下のみの電流輸送特性を実測した。Flux-annealing法を適用し、試料表面磁場のダイナミクスを磁気顕微測定することで超低電界領域における電流輸送特性の測定法を確立した。(計画実施項目1と2の一部)
(2)温度5~77 K・垂直磁場強度10 T以上における電流輸送特性のモデリングを行った。前述磁気顕微法と四端子法を組合わせて、広い温度・磁場域における電流輸送特性の実測データに基づいて、量子化磁束挙動の統計性を考慮した物理モデルで物性パラメータを抽出し、高精度なモデリングを行った。(計画実施項目3の一部)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度の項目1と2の実施期間中、垂直磁界印加条件下における測定に従来の認識と異なる結果が得られた。新しい理解や知見が得られたことを考慮し、当初予定していた垂直磁界だけでなく斜め磁界下における測定の実施を延期した。垂直磁界下における測定に専念し、超低電界領域における磁場依存性を詳細に調べた。 上記測定データに加えて、当初2023年度に予定していた項目3である物理モデルを用いたモデリングを、垂直磁界下に限定する方針で温度・磁場強度域にわたって高精度で物性パラメータを抽出した。
よって当初2022年度に予定していた斜め磁界下における電流輸送特性の一部測定とデータ整理に関する事項が未達である。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度では垂直磁界下での広い電界領域における基盤となる測定手法および、モデリングスキームを確立した。2023年度では引き続き斜め磁界下での実験を行う。得られた結果に対して、モデルにおける角度依存性の導入と解析をより詳細に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた実験計画と異なり実験回数が少なくなり、2022年度の請求額より実支出額の方が小さい状況となった。 翌年度分として請求した助成金と合わせて、当初予定していた実験項目を実施する。その他、国内外学術会議の参加などに助成金を使用する予定である。
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