本研究では、高温超伝導テープ線材の電流輸送特性の定量化に対し、基盤技術となる素線電流輸送特性のオペランド計測とその高精度なモデリング手法を確立する。計測するのにあたり、直流四端子法および、着磁した線材の磁界分布とそのダイナミクスを計測する磁気顕微法を組合わせて採用した。電流輸送特性のモデリング手法は、メゾスコピックスケールの量子化磁束挙動の統計性を考慮した物理モデルで行う。本研究の実施事項は、1.超低電界領域を含めた広い電界領域における磁界下の電流輸送特性の角度依存性の実測(2022前半)、2.ダイナミック電界制御による広範電界範囲の特性の実測(2022後半~2023前半)、3.量子化磁束挙動の統計性を考慮した物理モデルによるパラメーター抽出(R5)である。2023年度では前年度に引き続き項目1における電流輸送特性の角度依存性と項目3におけるパラメータ抽出の自動化を実施した。具体的な研究実績を以下に示す。
(1)前年度で垂直磁界印加下の電流輸送特性を実測した。今年度では電界領域10-5 V/m以上の特性取得に通電法を用いた。スプリット型マグネットと専用のクライオスタットを用いて実施した。液体窒素浸漬冷却環境において最大磁界印加2.0 T、角度0 ~ 90 degree下の計測に成功した。電界領域10-5 V/m以下の特性計測のために磁気顕微法の計測装置も引き続き整えているが、データ取得に至らなかった。
(2)前年度で実測データに基づいて、物理モデルを用いてモデリングするためにパラメータを抽出した。今年度では自動で抽出するために粒子群最適化(Particle Swarm Optimization)を用いた基礎検討を実施した。通電法で実測した電界電流特性に対して、物理モデルのパラメータを効率良くかつ正確に抽出できていることが分かった。
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