本研究は未知環境において作業目的を達成するロボットの実現を目的とし,環境適応能力の解明を目指すものである.生物が脳と身体構造,感覚器の3つを同時に発達させてきたことに着目し,目標状態をロボットの知覚(センサ)情報で規定し,自律的に適切な行動を選択する仕組みを構築する. 具体的には,車輪型ロボットによる未知環境における移動問題に取り組んできた.地図はなく,対象環境における移動アルゴリズムの準備は困難であることを前提とした.独立二輪車を使って,知覚情報としてカメラを使う.ゴール地点は未知であり,特定のボールを目標物とし,搭載カメラで目標物を接写できた状態を目標状態と定義した.この移動問題に対し,3つのサブテーマを設けて研究を進めてきた:1. 知覚情報の予測,2. 知覚情報から行動決定するシステムの構築,3. 繰り返しによる行動計画の実現である. 当該年度では,サブテーマの1つである知覚情報の予測と2. 知覚情報から行動決定するシステムを構築した.環境変化に応じて行動結果が予測からズレ,そのズレを自動的に調整する方法を提案した.この結果,申請者がこれまでに提案した「センサベースト階層化制御」に学習器を追加することで,記憶や経験を利用可能であることを示すことができた.学習器として画像認識を搭載し,機体の状態認識と環境の変化に伴う制御則の変化に対する調整方法について提案した.独立二輪車ロボットを使って提案法の検証を行った.結果として,学習器を追加したことでセンサから得られる視覚情報から移動型ロボットの状態を学習器で認識,環境変化にともなう行動変更を実現した.
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