本研究課題では,未知環境において作業目的を達成するロボットの実現を目的とし,環境適応能力の解明を目指した.生物が脳と身体構造,感覚器の3つを同時に発達させてきたことに着目し,目標状態をロボットの知覚(センサ)情報で規定し,自律的に適切な行動を選択する仕組みを構築することにした.環境とロボット行動の相互作用に着目し,ロボットが選択した行動,その結果現れる環境変化,さらにその変化をどうロボットが知覚するか,の一連を扱う枠組みを提案し,その実用性を検証することを目的とした. 本研究では,ロボットにおける知覚(センサ情報),身体構造(移動機構),そして脳(学習と制御器)の3つを同時に設計し,センサ情報に応じて行動選択機構を階層化することで目的達成と未知環境の不確かさ推定行動を結びつける仕組みを開発した.これまでに,センサ出力から直接行動を設計する「反射的行動」に限定し,階層化制御を提案した.車輪型ロボットおよびクアドロータヘリコプタにこの制御を適用し,目的地への移動を実現できることを示した.ただし,クアドロータヘリコプタに適用した階層化制御において,最下層が必要とするセンサ情報は複数であったこと,車輪型ロボットの階層化制御の発展としてクアドロータヘリコプタの階層化制御が位置づけられない点が問題であると考えていた. 当該年度において,クアドロータヘリコプタの階層化について再考し,目標値を与えるモジュール(大脳的役割)と,目標値にしたがった行動を実現するモジュール(小脳的役割)とに分割することで,ロボットの移動形態によらず,汎用化できる階層化制御システムを構築した.このことにより,環境の不確かさが要因で適切な目標値を与えられない状態を顕在化し,環境の不確かさ同定を選択する基盤を確立した.
|