本研究では、光デバイス自動最適設計のための汎用的な光導波路解析の高速・高効率化を目指して、有限要素法に基づく行列演算子を活用した並列処理のための解析領域分割法、入出力特性の計算、および計算効率化に関する検討を行った。 まず、有限要素法の境界処理方法として、伝搬演算子を使った境界条件を適用し、解析領域を囲うように設置された4つの入出力インターフェースにおける電磁界応答を計算可能な散乱演算子を導出した。任意の導波路構造をメッシュ分割して演算子化することができるため汎用性が高く、解析領域をブロックごとに分割して計算が可能であるため、非反復型の領域分割型解析を構築できる。開放系領域を扱うためには、隣接ポート間の不整合に起因する解析領域端からの非物理的な反射波の出現が問題となる。そこで完全整合層を併用し、散乱演算子を生成する過程で完全整合層を除去することでその問題を解消した。また、解析の安定性について検討を行った。放射波成分が大きい領域では全てのモードの結合系を考慮した伝搬演算子を取得することで安定化できると考えられ、屈折率差の大きな導波路においてもポート間接続が可能であることを示した。 次に、メッシュ分割数を削減することによる計算効率化を行うため、これまでに提案されている緩慢変化包絡線近似(SVEA)を適用した有限要素法について、伝搬演算子との結合解法について検討した。SVEAを適用する場合、通常反射波を扱うことができないが、新たに前進波と後退波を多重化することで、双方向伝搬解析が可能であることを示した。また、伝搬演算子の活用により、反射が伴わない任意構造と導波路不連続部の間を接続する伝達行列を生成し、SVEAを活用した領域分割解析が可能であることを明らかにした。伝達行列は散乱行列よりも接続計算を簡略化することができるため、より多くの接続段数が必要な場合に有用性が高い。
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