研究課題/領域番号 |
22K20440
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
村井 俊哉 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究員 (10963936)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | 光集積回路 / 磁気光学材料 / シリコンフォトニクス / 逆ファラデー効果 |
研究実績の概要 |
研究初年度は、数mW程度の世界最小レベルの光入力で、光導波路を介した逆ファラデー効果による有効磁界の観測を目的として、検証用デバイスであるCe:YIG上a-Si導波路マイクロリング共振器(MRR)の作製および測定系の構築を進めた。 最初のステップとして、磁化が光に影響を及ぼす磁気光学効果による光学特性の変化を調べるため、CW光に対するデバイス光応答を測定した。集積された電磁コイルにより外部磁界を発生させMRR下のCe:YIGを磁化した。続いて順方向、逆方向のそれぞれ異なる二つの方向から光を導波させた結果、伝搬方向に対応した共振波長の変化、磁気光学効果による非相反的な光伝搬特性の観測に成功した。 つづいて、光が磁化に及ぼす影響を調査するために、pump-probe法による時間領域での光応答を測定した。Pump光の入力直後、逆方向と順方向の伝搬方向のProbe光出力強度が異なる応答を示した。そのためこの急峻な変化にはPump光を介した逆ファラデー効果による磁化の応答も含まれている可能性があることが判明した。この測定だけでは、逆ファラデー効果による応答のみを切り分けて、応答速度やその大きさを実験的に評価することは難しく、次年度も引き続きデバイス評価を続け、詳細な値を解析する予定である。 加えて、SOI/Ce:YIG導波路の設計を進めた。設計を行うために、導波路伝搬光によって発生する有効磁界および磁気光学効果のシミュレーション環境を構築した。a-Si導波路を用いた原理検証デバイスでは1Wの光入力パワーで有効磁界は最大400 Oe程度しか生じないが、Siプラットフォーム上に形成するデバイスでは最大で1000Oeの有効磁界が生じ、効率が2倍程度改善することが分かった。MRRと入力導波路の結合効率など、設計パラメータの最適化を進め、テープアウトを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
磁化が光に影響を及ぼす磁気光学効果による光学特性の変化を調べ、伝搬方向に対応した共振波長の変化、磁気光学効果による非相反的な光伝搬特性の観測に成功した。 また、pump-probe法による時間領域での光応答を測定し、光が磁化に及ぼす影響を調査した。その結果、Pump光による逆ファラデー効果の初期的な測定に成功した。 加えて、SOI/Ce:YIG導波路の設計を進め、原理検証用デバイスと比較して2倍程度効率の良い設計を見出した。 上記結果を踏まえて「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
逆ファラデー効果による磁化の応答を切り分け、応答速度やその大きさを実験的に評価するために、pump-probe法による時間領域での光応答の測定を引き続き進める。 加えて、シリコンプラットフォームにおけるSOI/Ce:YIG導波路を用いて逆ファラデー効果を実証し光サーキュレータを実現する。光集積回路上における光サーキュレータの実現はこれまで困難な課題であり、提案する手法により高速に再構成可能という機能を付与できる。
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