研究課題/領域番号 |
22K20445
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
日高 菜緒 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60964004)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | 点群データ / 構造解析 / 維持管理 / ファイバーモデル / 橋梁 |
研究実績の概要 |
既設橋梁のFEMモデルを用いて残存耐荷力を定量的に評価することで,維持補修の優先順位を効率的に診断できると考えられるが,既設橋梁の多くは図面や計算書が残されていないため,FEMモデルの構築には多大なコストがかかる.そこで,レーザースキャナや写真測量から3次元位置座標を取得できる点群データから自動的にファイバーモデルの要素軸線と接続箇所,断面要素にあたる情報を抽出することでFEMモデルを構築する手法を開発する.更に,実橋の点群データを用いて提案手法の妥当性を検証する. 2023年度は,下路式トラス橋の側径間全体の計測点群データを用いて,橋梁全体のFEMモデルの構築と図面から手作業で作成したモデルとの解析結果の比較を実施した.対象のトラス橋には上弦材,下弦材,斜材,主桁,床版など複数の部材で構成されており,かつ同じ種別の部材でも力学的合理性から位置によって断面の形状や寸法,板厚が変化している.全橋の点群データから各部材にセグメンテーションする方法については各部材の中心軸を得ることが目的なので,橋軸方向に沿ってスライスして得た断面の点群から距離に基づくセグメンテーションで各部材の断面を分離し,それぞれの図心を求めることで各部材の中心軸の候補点を得た.鋼橋の数mmレベルの断面形状や板厚を取得するためには,高精度だが計測範囲が限られるレーザースキャナで詳細形状を取得し,それらから得られた形状を代表として共通の部材の要素の断面情報に適用した.また,床版の位置と厚さも,橋軸方向に沿ってスライスして得た断面の点群から断面形状を得る方法と同様の要領で自動的に取得した.生成されたトラス橋全体の解析モデルと図面から手作業で作成したモデルを用いて死荷重と活荷重を漸増載荷させて挙動を比較したところ,設計荷重内においては同等の挙動を示すことを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度の研究計画として提示していた,2022年度で開発したトラス橋の点群データからファイバーモデルを生成する手法を拡張させ実橋のトラス橋全体の計測点群データに適用させる工程が完了したため,計画通り順調に進んでいると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
2023年度で実橋のトラス橋全体の計測点群データからFEMモデルを生成することができたが,断面寸法や板厚に変化がある部材や高精度な計測機器で点群データを取得できなかった部材については,他部材の断面形状を転用したため,設計荷重以降では図面から手作業で作成したモデルと挙動に大きな差が生じた.このことからもう1年度延長させ,中精度だが広範囲の点群データを得られる計測機器で取得した点群データから適切な断面寸法や板厚を取得する方法,力学的合理性から高精度な計測を要する部材を選定する手法について考察し,本研究のとりまとめ行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
1年延長に伴い,研究内容の深度化および新たに論文投稿・発表を検討している.論文投稿費,発表旅費とその他消耗品費に使用する.
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