研究課題
MBRは下水処理の高度化を実現する技術であるが、膜ファウリングの制御が課題である。申請者はこれまでに下水処理場に設置したパイロットスケールMBRを連続運転し、MBR活性汚泥のファウリングポテンシャル(膜ファウリングの起こりやすさ)はバイオポリマーの槽内濃度と相関が強いことを見出している。本研究ではMBR槽内からバイオポリマーのみを選択的に回収・精製し、バイオポリマーのどのような質変化がファウリングポテンシャルを変動させているのかを明らかにすることを目指している。本年度は実都市下水を処理するパイロットスケールMBRから性質が異なるバイオポリマーを回収・精製することに成功した。液体クロマトグラフィー-有機炭素測定(LC-OCD)を用いた精製バイオポリマーの分子量分析とMBRにおける膜ファウリング発生状況から、低分子バイオポリマーの存在比が高くなることで不可逆的ファウリングが深刻化する可能性を見出した。水晶振動子マイクロバランス法(QCM)により精製バイオポリマーと膜材質(PVDF)との親和性を評価したところ、親和性の高さとMBRにおける膜ファウリング発生速度の序列が一致していた。精製バイオポリマーのアミノ酸組成には変化が認められず、バイオポリマーを構成するタンパク質が変化しなかったことが示唆された。精製バイオポリマーの単糖組成には明確な差異が認められ、とくに細菌の細胞壁由来の多糖類が重要である可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
実都市下水を処理するパイロットスケールMBRから性質が異なるバイオポリマーを回収・精製することに成功した。精製バイオポリマーとMBRにおける膜閉塞物質の物理化学特性を網羅的に分析し、膜ファウリング発生機構を多角的に考察することができた。関連する研究成果が査読付き国際誌に掲載された。国内学会において2編のポスター発表と1編の口頭発表を行った。
2022年度までに実都市下水を処理するパイロットスケールMBRから性質が異なるバイオポリマーを回収することができた。2023度は性質が異なる精製バイオポリマーと水晶振動子マイクロバランス法(QCM法)を用いて、バイオポリマーと膜材質との関係を詳細に検討する。研究結果をもとに、新規耐ファウリング膜の開発・製作に不可欠となる「ファウリングの起こりづらい」材質を提示する。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件)
Journal of Environmental Management
巻: 328 ページ: 116863~116863
10.1016/j.jenvman.2022.116863
Journal of Japan Society of Civil Engineers, Ser. G (Environmental Research)
巻: 78 ページ: III_135~III_142
10.2208/jscejer.78.7_iii_135