膜分離活性汚泥法(MBR)における膜ファウリングの発生には、液体クロマトグラフィー-有機炭素測定装置により検出される分子量2万以上の親水性溶存有機物(バイオポリマーと総称される)が強く関与する。本研究ではMBR槽内バイオポリマーの質変化を追跡することで、MBRにおける膜ファウリング発生機構の解明と膜ファウリング抑制手法の提案を目指している。本年度は水晶振動子マイクロバランス法(QCM)を活用して、新規耐ファウリング膜の開発・製作に不可欠な「ファウリングが起こりづらい」材質を探索した。実都市下水を処理するパイロットスケールMBRを連続運転し、膜ファウリング発生状況のモニタリングとMBR槽内バイオポリマーの選択的回収・精製を実施した。前年度までに開発した手法を用いて、MBR活性汚泥のファウリングポテンシャル(膜ファウリングの起こりやすさ)が異なる時期に、性質が異なるバイオポリマーを回収・精製した。QCMを用いたバイオポリマーと膜材質との親和性評価においては、市場シェアが高いポリフッ化ビニリデン(PVDF)に加え、フルスケールMBRでの適用例があるポリエチレン(PE)、ポリエーテルサルフォン(PES)、セラミックスを検討対象とした。いずれの精製バイオポリマーについても、膜材質との親和性の序列はPVDF>PES>PE>セラミックスとなった。耐ファウリング膜材質として、セラミックスが有用である可能性が示唆された。
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