この研究の目的は,セメント固化処理された土の長期的な劣化特性を明らかにすることである.セメント固化処理は,軟弱土の強度向上や汚染物質の封じ込めなどに広く使用されているが,劣化特性を把握することは現場での利用にとって重要である.最終年度では,昨年度に開発した20本の供試体を同時に透水できる装置を用いてさらなる透水実験を行ったほか,200kPa以上の加圧透水が可能な装置を開発し,加圧により透水速度を上げることでさらなる劣化促進を成功させた.さらに最終年度後半では,雨水や地下水だけでなく海水による劣化についても研究するため,海水曝露実験を開始し,海水に曝露した固化処理土の強度変化を針貫入試験を用いて測定し,既往の水中曝露データと比較した.
研究期間を通じて得られたデータから,カルシウム溶出量と強度劣化に正の相関があること,透水によりカルシウムだけでなくナトリウムも溶脱すること,透水により固化処理土の透水係数が低下していくこと,水中よりも海中の方が劣化の進行が早いことなどが確認された.さらに,これらのデータから水中の固化処理土の劣化を,水中曝露面からの距離,時間,強度の3つの軸で構成される空間内の曲面で表す式を提案した.これらの成果は,セメント固化処理の適切な利用や環境への影響を評価する上で重要であり,将来の研究にも貢献するものと考えられる.今後は,開発した2つの透水試験装置を用いて材料の種類を変えながら実験を続け,より高精度で汎用性の高い劣化推定式の構築を目指す.
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