本研究は、地質構造・社会情勢との関係から宇部炭田における炭鉱住宅地の形成・変容過程を明らかにすることを目的に実施した。その結果、宇部炭田の炭鉱住宅地における鉱業権者の土地取得・放棄動向について以下のことが分かった。 近代化以降、まず全域で個人の土地取得が進行し、やがて地質構造に伴い土地取得の重心が海岸部へ移るとともに、西部では企業の土地取得が進行した。 その後、戦時中の宇部興産設立に伴い、海岸から北部方向へ宇部興産、その他企業、個人という土地所有の階層性が生じたが、戦後に炭鉱業衰退とともに再び土地所有の重心が海岸部へ移り、最終的には部分的に宇部興産による土地所有のみが継続する状態に至った。
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