本研究では、文化財建造物の歴史地震の直後に行われた構造補強を考察した。当該補強の設計方法や施工方法を明らかにしつつ、その補強効果を構造計算や模型実験を行うことで定量的に評価した。これまで、文化財建造物の建設後に行われた構造補強は当初の姿を損なう改変とみなされ低く評価されることが多かったが、本研究ではこれを建築構造学の観点から見直すことで、今後の地震対策に有用な知見を提供するとともに、当時の災害対応として積極的に評価することができた。災害国日本における文化財建造物保護に新しい視点を提供できたと考える。
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