部材数の削減と施工性の向上を目的として、座屈拘束ブレースを対象とした新たな一面摩擦接合形式を提案した。提案形式の特徴は、リブプレートをブレース材軸から偏心させて配置することで、ブレースとガセットプレートの図心が一致している点である。提案一面摩擦接合部の構造性能を把握するため、軸方向圧縮載荷試験を実施した。また、提案形式の鋼材使用量とコストを積算し、従来の二面摩擦接合と比較した場合の削減効果を把握した。 圧縮載荷試験では、提案一面摩擦接合部は従来の二面摩擦接合部と同等の圧縮耐力を有することを確認した。一面摩擦接合部と二面摩擦接合部はともにガセットプレートの剛性によって座屈性状が異なり、剛性が大きい試験体では首折れ座屈が生じ、小さい試験体ではガセットプレートで局部座屈が生じた。全試験体で、想定する芯材の降伏荷重レベルまで接合部は損傷しなかった。本検討のディテールでは、提案一面摩擦接合は、首折れ座屈・局部座屈の防止に対して二面摩擦接合と同程度に有効であると考えられる。一面摩擦接合部は、ブレースとガセットプレートの間の偏心量が大きいほど耐力は低下すると想定したが、偏心量と圧縮耐力には明確な相関性が表れなかった。この原因の一つとして、板厚が小さく、偏心量が小さかったため、他の初期不整の影響が大きく表れたことが考えられ、板厚の大きな場合の検討が今後の課題である。 鋼材量とコストの分析では、標準ボルトピッチを基準としたディテールについて、提案一面摩擦接合と二面摩擦接合を比較した。一面摩擦接合は、二面摩擦接合に用いられる添え板が不要となるため、鋼材量が12%低減した。コストについては試験体製作時の単価を用いて算出した。加工費は鋼材量に加工単価を乗じて計算されるため、一面摩擦接合では鋼材量の低下に伴い、材料費と加工費が低下した。本検討では提案一面摩擦接合のコストは二面摩擦接合より15%低減した。
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