研究課題
本研究の目的は、抗体ベースの高感度バイオセンサーQuenchbody(Q-body)の構築に適する直交ペプチドペアを高効率に選抜できる新規スクリーニング法を開発することである。既報のコイルドコイル形成ペプチドペアE4/K4を用いることで抗体断片を迅速にバイオセンサー化できることは実証済みだが、さらなる高感度化のためにE4/K4とは相互作用しないが親和性は高い別のペプチドペアが望まれた。そこで、このようなペプチドペアを獲得するためにファージと酵母を利用した新たなスクリーニング法を着想した。本年度は、研究計画に従いスクリーニング用にE4/K4に変異を導入することで逆平行結合が抑制される数種類のペプチドペアを設計・合成し、これを用いて作製したQ-bodyについて狙い通り逆平行結合が抑制されることを確認した。このK4変異体に関して、ペプチドと色素間のリンカーを幾つか検討することで従来よりも高い応答を示すQ-bodyが得られることも分かった。逆平行結合抑制ペプチドペアによる蛍光応答の向上は天然抗体を直接Q-body化可能なQ-probeに適用した場合に顕著で、従来4倍であった蛍光応答が13倍まで向上することが判明した。また、将来的に獲得したペプチドペアを使って構築する2色標識Q-body構築に向けて、比較用のモデルとしてH鎖とL鎖の両方に同じE4変異体が融合されたFab断片を用いてQ-bodyを構築できることも実証した。以上、今後のスクリーニング系構築に向けて鋳型として適切な結合方向が制御されたペプチドペアを創出することができた。
2: おおむね順調に進展している
本年度に実施予定の直交ペプチドペアスクリーニングに利用する逆平行抑制ペプチドペアの構築を上述の通り達成した。現在、K4を提示するファージとE4を提示する酵母を作製し実験モデルの実証に取り組んでいる。
来年度以降も基本的には計画通りに研究を推進する。スクリーニングにより濃縮されてきたペプチドペアの直交性評価と配列の同定に関して、計画段階ではELISAによる評価を考えていたが、より効率がいい酵母ツーハイブリッド法と次世代シーケンシングを組み合わせた方法も検討する。
消耗品のコストが高いライブラリーの構築からスクリーニング実験のための費用を残した。
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Biosensors and Bioelectronics
巻: 219 ページ: 114793
10.1016/j.bios.2022.114793