2023年度は,(1)焼成処理によるナノ粒子触媒層の細孔制御,(2)貴金属担持による酸化物単体の導電性改善,(3)マクロポーラス酸化物微粒子の合成と三次元構造解析を実施した。 (1)焼成処理によるナノ粒子触媒層の細孔制御:火炎法により合成したナノ粒子に焼成後処理を施すことにより,粒子のネッキング構造と一次粒子径を調整し,機械的安定性の制御を試みた。その結果,高温で熱処理することによりネッキングが発達し,ホットプレス後でも触媒層中に空隙を維持できることがわかった。さらに,MEAを作製して電池特性を評価したところ,高電流領域において電圧が維持される結果が得られ,生成した空隙がガスや水の経路として使用され,ガス拡散抵抗が低減することがわかった。 (2)貴金属担持による酸化物単体の導電性改善:酸化物担体にイリジウムを担持することにより,耐久性と性能を併せ持つ触媒担体の開発を試みた。結果として,イリジウムを5-20 %担持することで,体積抵抗を10^8オーダーで低減することができ,従来品のカーボンに匹敵する電気化学活性を発現した。 (3)マクロポーラス酸化物微粒子の合成と三次元構造解析:噴霧乾燥法により作製したマクロポーラス酸化物微粒子について,TEM-EDSを用いたトモグラフィーによる元素分布解析を行った。サブミクロンサイズのマクロポーラス微粒子における三次元の元素分布が得られ,触媒担持形態と性能の相関の解明に対して有効なデータを取得できた。 本研究では,主として火炎法によって酸化物担体に階層的なマクロ孔の付与を行った。燃焼条件の緻密な制御・焼成後処理・造孔材添加などによる細孔制御と,三次元細孔評価法の確立によって,固体高分子形燃料電池用触媒の耐久性と性能の向上を実現した。
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