亜酸化窒素(N2O)は二酸化炭素の約300倍の強い温室効果を示すため、排出量の低減化が求められている。本研究では、電場触媒プロセスをN2O分解反応に適用し、従来課題とされていた共存酸素や吸着酸素を能動的に制御することで、N2Oを選択的にN2とO2に分解することを目指した。触媒活性は固定床常圧流通式反応装置を用いて、電場あり・なしの条件でN2O直接分解試験を行い評価した。 触媒活性試験の結果、過剰酸素・水蒸気共存下のN2O分解反応に対して電場をアシストすることで、従来の触媒反応では反応の進まない低温度域でN2O分解反応が進行することを見出した。担体材料・担持金属スクリーニングから、CeO2にZrをドープした担体材料にRhを担持した触媒(Rh/Ce0.7Zr0.3O2)が最も高いN2O分解活性を示した。さらに、電場アシスト時には共存酸素濃度を増加させても高いN2O分解能力が維持されることを示した。一般的には、共存酸素によって触媒作用が阻害されるが、電場アシストによりN2O分解活性に対する酸素阻害が抑制できることを見出した。また、N2O直接分解のメカニズムを解明するため、触媒にN2Oガスを供給した直後の窒素と酸素の生成量の比(N2/O2)を観察した。N2/O2値は定常時には2を示すが、電場非印加時では反応初期に2を上回る結果が得られた。つまりN2Oによって触媒表面が酸化され、活性サイトに酸素が取り込まれていることが分かる。一方電場印加時では、反応初期にN2/O2値が2を下回る結果が得られた。これらの結果から電場印加時には、N2Oが吸着酸素と触媒表面で反応していること(ER機構を経由してN2O直接分解が進行していること)が示唆される。以上より、電場アシスト時には吸着酸素がN2O直接分解反応に寄与するため、過剰酸素雰囲気下においても低温でN2O直接分解サイクルが成立する。
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