研究課題/領域番号 |
22K20494
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
周 偉男 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 若手国際研究センター, ICYS研究員 (20961593)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | 横熱電効果 / スピンカロリトロニクス / 熱電変換 / 異常ネルンスト効果 / 磁性材料 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,熱電材料と磁性材料の新規な複合材料や複合構造を作製することにより,熱電材料のゼーベック効果を磁性材料の異常ホール効果により横熱電効果へと変換させる新規なゼーベックアシスト型横熱電効果を開拓し,それを用いて大きな横熱電能の実現である. 本目的を達成するために,作製した複合材料や複合構造の特性を全面的に調べて,試料全体の横熱電能からゼーベックアシストによる寄与を分離する必要がある.今年度は,薄膜試料に温度勾配と外部磁場をかけて,その熱電能と横熱電能を室温から低温領域までに定量評価できる測定システムを立ち上げた.この測定システムを用いて,ワイル半金属Co2MnGa薄膜の異常ネルンスト伝導率の温度依存性を測定し,先行研究と一致する結果を得た.また,このCo2MnGa薄膜を用いて,磁性材料の異常ネルンスト伝導率を評価する新しい手法を提案実証した.試料にかける温度勾配と平行になる磁性薄膜の両端を非磁性金属材料で繋ぎ閉回路を作る際に,横熱電能が磁性薄膜の抵抗率と異常ネルンスト伝導率からなる内因性的な項に近似することができる.これにより閉回路の横熱電能と磁性薄膜の抵抗率が分かれば異常ネルンスト伝導率を推算することが可能になり,従来手法と比べて測定する必要があるパラメーターおよび測定時間を減らすことができる.この新しい手法を用いることにより,複合材料や複合構造に適した磁性材料の探索の加速が期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究により,提案したゼーベックアシスト型横熱電効果を定量評価するための実験基盤を整えて,予備実験を行った.更に,磁性材料の探索を加速させることができる新しい評価手法を提案実証した.以上より,研究がおおむね順調に進展していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
初年度に構築した測定システムと評価手法を利用し,複合材料や複合構造に適した磁性材料,およびこの磁性材料と合う熱電材料を定める.次に磁性材料と熱電材料を含む試料の作製と評価を行い,横熱電能を増大する道を探索する.
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次年度使用額が生じた理由 |
実験の消耗品の購入が,実験計画が若干変わったことと購入納期のために,翌年度で行うことにした.そのために,未使用の助成金が生じた. 未使用の分と翌年度分として請求した助成金と合わせて,測定機器(グラフィカル・ソースメータ)と消耗品の購入および学会発表の経費として使用する予定である.
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