研究課題/領域番号 |
22K20506
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
伊藤 愛 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00963464)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | 脊椎動物 / 上陸 / 心室 / 拡張機能 / 重力 |
研究実績の概要 |
本研究は,“脊椎動物の上陸が心臓の拡張機能低下の外的要因であったのか”という問いに答える進化バイオメカニクス研究である.昨年度は疑似上陸環境での飼育環境の構築,動物モデルの作製を検討したものの,想定を超える難易度であったため,飼育が予定通りに進行しなかった.そのため,生息環境によって重力負荷が心臓に与える影響が異なる可能性が高いヘビを用いて,重力負荷の増大が臓器レベルの心室の拡張機能に及ぼす影響を調べた.ヘビは,生息環境によって心臓の位置が異なり,樹上棲のヘビの心臓相対位置は地表棲より頭に近いことが報告されている(Seymour and Lillywhite, 1976).樹上棲のヘビは木に登る際,重力に逆らって心臓から脳まで血液を送る必要があり,生息環境による重力負荷の違いがヘビの血液循環に大きな影響を及ぼしている可能性が高い.そこで,昨年度は,地表棲と樹上棲のヘビ心室の臓器レベルの拡張機能と構造の違いの調査を行った.その結果,地表棲と樹上棲のヘビの心室硬さの間に有意な差はなく,心室壁の緻密層厚さも同程度であることが示唆された.しかしながら,調べた2種のヘビの心臓相対位置にあまり違いがなかったことから,地表棲と樹上棲の環境における重力負荷の影響の違いは,水棲から陸棲へと上陸する際に変化する重力負荷と比較して小さく,心室の拡張機能には大きな影響を及ぼさない可能性が考えられる.そのため,現在は疑似上陸動物モデルの作製に加えて,カエルとは異なる両生類を用いて,変態(幼体(水棲)から成体(陸棲))過程の心室の拡張機能の解析も進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の予定であった疑似上陸動物モデルを用いた検証は遅れているため,研究計画とは異なる実験系で研究目的の達成を目指した.
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り疑似上陸動物モデルの作製・拡張機能の調査を行うとともに,生息環境の異なる両生類(カエル)心室のRNA解析を行うことで,ゲノム科学の観点から,陸棲生活に適応する過程における重要な因子を見出したいと考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
疑似上陸動物モデル作製の進捗が遅れており,十分に実験が遂行できなかった.そのため持ち越した予算は,実施できなかった実験で用いる消耗品や,昨年度投稿・発表を予定していた,論文の掲載料や学会発表の参加費に使用する予定である.
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