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2022 年度 実施状況報告書

光濃縮による細胞内人工液液相分離ツール開拓への挑戦

研究課題

研究課題/領域番号 22K20512
研究機関大阪公立大学

研究代表者

豊内 秀一  大阪公立大学, 研究推進機構, 特任講師 (40851382)

研究期間 (年度) 2022-08-31 – 2024-03-31
キーワード細胞内液液相分離 / 光圧 / 光濃縮 / タンパク質
研究実績の概要

細胞内液液相分離(LLPS)によって形成される非膜オルガネラが様々な生体現象に関わっていることが示され大きな注目を集めている。一方で、人工的にLLPSを高い時空間分解能で確実に捉える方法は確立されているとは言えない。そこで本研究課題では、光圧によるタンパク質の局所的光濃縮を利用し、細胞内LLPSを「狙った位置」かつ「狙った時間」に引き起こす新しい人工LLPSツールの開拓を目指している。リゾチーム(LYZ)をモデルタンパク質とし、光圧によってLYZのLLPS誘起が可能か検証した結果、光照射下でLYZが高濃度に濃縮され、過渡的な高濃度ドメインが形成される事が明らかになった。この高濃度ドメインの境界部分では、タンパク質の濃度差が観測されないなど、濃度や温度の変化によって誘起される通常のLLPSとは異なる、光濃縮下に特異的なLLPSである事を明らかとし報告した(S. Toyouchi et al. APEX 2023)。この光濃縮下特異的なLLPSをより詳細に調べるために、LYZ集合体について顕微偏光ラマン散乱法を用いてタンパク質配向について調べた。また、クラウディング剤として知られるポリエチレングリコール(PEG)を添加し、光濃縮誘起LLPSにおける分子クラウディングの効果を調べた。その結果、光濃縮下でPEGが「つなぎ」のような役割を果たすことでLYZのLLPSを促進する事が明らかになった。また、異種微粒子と生体分子の混合系における光圧誘起のによる動力学制御にも取組み、細胞内人口液液相分離の目標達成に向けて別のアプローチから新規知見を得た。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

初年度は、タンパク質の光濃縮誘起LLPSの実証を行った。さらに顕微偏光ラマン散乱法を用いて、光濃縮誘起LLPSドメイン内外のタンパク質分子の配向について調べる事を試みた。しかしながら、ラマン散乱の低い感度および低時間分解のため、分子配向についての情報を得る事が困難であることが判明した。そのため、申請段階での研究計画を変更し、より高い感度と時間分解能が期待できる顕微蛍光分光のための装置設計し、光濃縮下での分子回転や揺らぎなどのダイナミクスを局所計測する事を目的とした光学系の構築を進めている。初年度では、自作の蛍光顕微鏡の組み立てを完了した。

今後の研究の推進方策

顕微蛍光分光のための光学系を構築し、タンパク質の光濃縮下で観測される高濃度ドメイン内外での分子ダイナミクスについて調べる。LZYとは異なるタンパク質についても光濃縮誘起LLPSの実証を進める。クラウディング剤添加による効果をより詳細に調べる。また、細胞内での光濃縮誘起LLPSの実証を試みる。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (6件)

  • [国際共同研究] 国立陽明交通大学(その他の国・地域 Taiwan)

    • 国名
      その他の国・地域
    • 外国機関名
      国立陽明交通大学
  • [国際共同研究] ルーバン大学(ベルギー)

    • 国名
      ベルギー
    • 外国機関名
      ルーバン大学
  • [国際共同研究] メルボルン大学(オーストラリア)

    • 国名
      オーストラリア
    • 外国機関名
      メルボルン大学
  • [雑誌論文] Two-stage optical trapping and assembling of protein at air/solution interface2023

    • 著者名/発表者名
      Yi Po-Wei、Chiu Wei-Hsiang、Toyouchi Shuichi*、Bresoli-Obach Roger*、Hofkens Johan、Chatani Eri、Hosokawa Yoichiroh*、Sugiyama Teruki*、Masuhara Hiroshi*
    • 雑誌名

      Applied Physics Express

      巻: 16 ページ: 025501~025501

    • DOI

      10.35848/1882-0786/acb3ab

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] 異種粒子の光圧誘起集合化による 極微量DNA検出2023

    • 著者名/発表者名
      豊内 秀一
    • 学会等名
      新学術光圧ナノ物質操作・若手領域会議
  • [学会発表] 異種プローブの光濃縮による迅速・高感度なDNA定量分析法の開発2023

    • 著者名/発表者名
      豊内 秀一
    • 学会等名
      2023年第70回応用物理学会春季学術講演会
  • [学会発表] Two-Stage Optical Trapping Mechanism of Protein at its Air/Solution Interface2023

    • 著者名/発表者名
      Hiroshi Masuhara
    • 学会等名
      2023年第70回応用物理学会春季学術講演会
  • [学会発表] 非線形フォトクロミック反応を用いた 銀ナノワイヤープラズモニック導波路効果の可逆的制御2022

    • 著者名/発表者名
      豊内 秀一
    • 学会等名
      2022年光化学討論会
  • [学会発表] Optically Reconfigurable Random Laser using Optically Evolved Assembling of Polystyrene Microparticles2022

    • 著者名/発表者名
      Shuichi Toyouchi
    • 学会等名
      2022年第83回応用物理学会秋季学術講演会
  • [学会発表] Cooperative Optical Trapping Dynamics of Two Proteins at Solution Surface2022

    • 著者名/発表者名
      Wei-Hsiang Chiu
    • 学会等名
      2022年第83回応用物理学会秋季学術講演会

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公開日: 2023-12-25  

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