カルコゲノカルボニルに14族元素が隣接した14族カルコゲノアシルメタロイドは、合成法が限られ不安定であることから、その構造や反応性に関する知見には乏しく、網羅的な合成も行われていなかった。本研究では、適切な置換基の選択により電子的安定化を行うことで、これまでに合成されてこなかったゲルマニウム置換体を含む、14族チオアシルメタロイドの合成および単離を達成した。合成した化合部群はNMRスペクトルだけでなく、単結晶X線結晶構造解析によってもその構造を明らかにすることができた。その結果、特に硫黄とゲルマニウムを含むチオアシルゲルマンが安定な結晶として簡便に合成・保存可能であることを見出した。一方チオアシルメタロイドは、酸素に対して不安定なだけでなく、熱的にも二量体や三量体へと変換されることを見出した。残念ながら、これらのチオカルボニル化合物を光によりカルベンへと誘導することは困難であったが、想定していなかった新規分子変換反応の萌芽へと繋げることができた。
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