本研究では、共触媒を用いて反応系中でオンデマンドに主触媒を活性化することで、取り扱いや合成が容易かつ高活性な触媒を開発すること及び既存の触媒では不可能であった触媒反応を実現することを目的としている。特に本年度は、光酸化還元触媒に加えてルイス酸を共触媒として用いることで酸化還元電位を適切に調整し、反応速度の加速や選択性の制御に応用することを目標にした。具体的には、①ルイス酸活性化型光酸化還元触媒の開発、②光酸化還元触媒を用いる共役ジエンへの求核付加反応の開発、③ルイス酸によるアルケンへの求核付加反応の反応制御の研究を遂行した。①では、ルイス酸を共触媒として用いて酸化力の乏しい光酸化還元触媒に作用させることで、光酸化還元触媒の電子密度を低下させ、酸化力を向上させることを目的とした。α-アミノアルキルラジカルの電子不足オレフィンへの付加反応において、光酸化還元触媒を単独で用いると低収率であったが、ルイス酸を共触媒として添加することで目的の反応が加速されることを見出した。また、ルイス酸が光触媒に配位するだけでなく、ルイス酸が電荷移動錯体に作用することも反応加速の原因の一つであることを明らかにした。②では、③でのルイス酸による位置選択性の制御のための情報収集として、光酸化還元触媒を用いて共役ジエンに対する位置選択的求核付加反応の開発を行い、選択性の傾向および反応機構の考察を行った。③では、②の光酸化還元触媒を用いることでジエンに対する求核付加反応での知見を基にして、ルイス酸を添加することで、アルケンに対する求核付加反応の位置選択性を厳密に制御できることを明らかにした。
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