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2022 年度 実施状況報告書

分子集積で明らかにする超蛍光現象の創発

研究課題

研究課題/領域番号 22K20549
研究機関国立研究開発法人理化学研究所

研究代表者

藤原 才也  国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 特別研究員 (50963526)

研究期間 (年度) 2022-08-31 – 2024-03-31
キーワード結晶 / 配位高分子 / 光励起 / 発光
研究実績の概要

光励起によって複数の発光体に誘起された双極子の振動の位相が狭い空間内で同期したとき、最早それら双極子は量子的に異なるものとしては扱えず、あたかも巨視的な一つの双極子であるかのように発光する「超蛍光」と呼ばれる現象を示す。近年、光デバイスの性能向上や量子光源への応用を指向した超蛍光固体材料の開発が無機化学分野で加速し始めているが、一体どのような集積構造がどのように超蛍光を導くのかは未だ謎に包まれており、また無機材料を発光体とした系では双極子の性質やその配列を自在に変化させ議論することは難しい。
そこで本研究では、新たに有機分子を発光体とする系に超蛍光現象を展開し、超蛍光特性と発光体の集積様式との相関の解明に迫ることを目的とした。本年度は、用いる有機分子発光体として、優れた吸光・発光特性を持つことで知られる多環芳香族炭化水素(PAH)に着目した。配位高分子の形で集積させるための修飾を施したPAH分子数種の合成を行い、さらにそれを用いた結晶材料を作製することができた。また発光体の合成と並行して、作製した結晶材料の基礎光物性並びに蛍光寿命測定を温度可変で実施するための測定機器の整備を行った。試験測定を進める中で、未だ超蛍光現象は認められていないものの、作製したPAH分子が従来注目されてきたコロネンと同様に高い吸光度に加え長寿命燐光特性を示すことが判明し、優れた光物性を有することが裏付けられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は、有機分子発光体として優れた吸光・発光特性を持つ多環芳香族炭化水素(PAH)に着目し、配位高分子の形で集積させるための修飾を施したPAH分子数種の合成と、それらを用いた結晶材料を作製することができた。また、受け入れ研究室にて基礎光物性並びに蛍光寿命測定を温度可変で実施するための測定機器の導入を行い、作製した結晶材料の構造と光物性評価とその相関の理解が進行中である。
以上のことから本研究の目的である、新たに有機分子を発光体とする系に超蛍光現象を展開し超蛍光特性と発光体の集積様式との相関の解明に向け、概ね順調に研究が進展していると考えられる。

今後の研究の推進方策

合成法を確立した多環芳香族炭化水素(PAH)について、昨年度に引き続き、種々の修飾部位を導入したものを合成し、また金属種や結晶成長条件を変化させることで様々作製可能な配位高分子について構造と物性を評価していく。
これまでの配位高分子に関する研究の中で数多く報告されてきた、配位高分子のフレームワーク中で分子を様々な形で配列させるための配位子の設計指針や金属種の選定に関する知見を活かし、配位高分子中で集積させた発光体に形成される双極子どうしが上手く同期し、かつその位相緩和が抑えられる理想的な配位高分子の結晶構造を探る。具体的には、孤立状態(溶液)と集積状態(結晶)における吸収・発光スペクトルを比較し、特に作製した結晶の蛍光寿命について協調的な発光現象に伴う極端な短寿命化が見られるものがないか検討する。配位子や金属種と共に結晶作製条件をスクリーニングし、超蛍光現象を発現する結晶材料の創出を目指す。位相同期が起こるために必要とされる配位子の配列様式や、その緩和を抑えるための結晶構造に関する知見を獲得し、一般化することで、位相同期・超蛍光という特異な状態・現象を実現する系の設計指針の確立を見据える。

次年度使用額が生じた理由

本研究における材料設計と得られた測定結果の検証に不可欠な計算用PCを購入予定であったが、次年度に持ち越しとなったため。
翌年度分として請求した助成金と合わせることで、Gaussian等の量子化学計算プログラムの使用による励起状態の有機分子の電子分布計算とそれにより得られる双極子に関する解析を十分に行えるPCを検討し、購入予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] Singlet fission as a polarized spin generator for dynamic nuclear polarization2023

    • 著者名/発表者名
      Kawashima Yusuke、Hamachi Tomoyuki、Yamauchi Akio、Nishimura Koki、Nakashima Yuma、Fujiwara Saiya、Kimizuka Nobuo、Ryu Tomohiro、Tamura Tetsu、Saigo Masaki、Onda Ken、Sato Shunsuke、Kobori Yasuhiro、Tateishi Kenichiro、Uesaka Tomohiro、Watanabe Go、Miyata Kiyoshi、Yanai Nobuhiro
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 14 ページ: 1056

    • DOI

      10.1038/s41467-023-36698-4

    • 査読あり / オープンアクセス

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公開日: 2023-12-25  

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