研究課題/領域番号 |
22K20555
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
青木 健太郎 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (00963810)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | プロトン / イオン伝導体 / 伝導度スイッチング / 外場応答 / 光異性化 / 光機能性材料 / 金属錯体 |
研究実績の概要 |
本研究では、複合的に光応答性部位を導入した金属錯体を開発し、光応答性部位の協奏的作用を誘起することで高いイオン伝導度スイッチング材料を創成する。さらに、光応答性部位の選択的な異性化反応による対照実験や光照射下のオペランド測定からスイッチング機構を多角的に検討・解明することで、高いオン・オフ比を示す光誘起イオンスイッチング材料の設計指針を確立することを目的としている。 今年度は、構造変化とpKa変化を誘起する光応答性部位を導入した配位子を鉄イオンと反応させて金属錯体を合成し、この錯体の光照射前の構造を明らかとした。この錯体の光応答性部位の異性化波長を同定したのち、298 Kにおける光照射前後のプロトン伝導度変化を検討した。その結果、二つの光応答性部位の一方のみを異性化させた際のイオン伝導度のオン・オフ比は2.5および10^2と低い一方で、二つの光応答性部位を同時に異性化させることで協奏的な作用が誘起され、10^5に至る高いオン・オフ比を示すことが分かった。さらに、このイオン伝導度のスイッチングは光照射のオン・オフに対して可逆的に応答することを明らかとした。 また、スイッチング機構解明を志向して二つの光応答性部位を逐次的に異性化させる過程で、二つの光応答性部位はともに異性化しているものの、10^5のオン・オフ比を示す相とは異なる結晶構造を有し、イオン伝導度のオン・オフ比が500程度の中間相を見出した。この相は異性化波長の光照射強度を上げることで10^5のオン・オフ比を示す相に転移する中間相であることを見出した。さらに、二つの光応答性部位の異性化波長の照射強度を系統的に変化させた際の構造相転移挙動を解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでの研究で既に光応答性部位を複合的に導入した錯体の合成に成功し、さらにこれらの光応答性部位を協奏的作用させることで10^5に至る光誘起イオン伝導度スイッチングを見出している。この錯体の光照射前後の結晶構造変化やイオン伝導の活性化エネルギーを評価することで、協奏的作用の機構解明の手掛かりをつかんでいる。また、光照射強度を変えることによる対照実験や中間相の発見、さらには照射強度を制御することで構造相転移挙動の解明にも至っており、当初の計画以上の進展が得られたと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、高いオン・オフ比を示す光誘起イオンスイッチング材料における光応答性部位の協奏機構解明を推進する。光照射前後の結晶構造解析による構造的知見や、光照射前後のイオン伝導度やプロトンの自己拡散係数の評価によるイオン伝導度に関する知見を得るとともに、各光応答性部位の果たす役割や協奏機構を解明する。これを基に光誘起イオンスイッチング材料の設計指針を構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
導入予定であった光照射装置は制御部品の不足により今年度中に納品できず、次年度使用額が生じた。次年度はこの光照射装置に加えて、複数回の出張測定と国内外の学会発表、論文投稿関連の経費で利用する予定である。
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