研究課題/領域番号 |
22K20556
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
村松 佳祐 信州大学, 先鋭領域融合研究群先鋭材料研究所, 助教(特定雇用) (50915353)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | 無機合成 / 層状物質 / 形態制御 / 結晶成長 |
研究実績の概要 |
本研究では最近我々が見出した「金属錯体を原料とした過飽和度制御による層状水酸化ニッケルの異方成長法」をベースとし、「層状物質の柱状化」という新たな物質設計コンセプトの実証を目標に掲げている。この目標達成に向け①柱状層状物質の合成方法の深化および発展と②柱状化が及ぼす物性変化の活用および理解に取り組んでいる。 これまでにニッケル-ジアミン錯体を原料とした層状水酸化ニッケルの合成により、積層方向サイズが面内方向サイズを超える異方的なロッド状金属水酸化物が生成することを見出している。また、ニッケルイオンと類似の錯形成挙動を示すコバルトイオンを用いた場合においても、柱状結晶の生成を確認している。更なる適用範囲の拡大と柱状化の進行条件の理解に向け、水酸化ニッケルと同様の水酸化物を形成する他の遷移金属元素(マンガンや鉄)に対して検討したところ、異方成長の進行は確認されず、一部で金属イオンの酸化が進行していた。これらの遷移金属元素はニッケルやコバルトと比してアミン系錯体の安定度定数が低いため、溶液条件をニッケル系と近づけるためには錯体の安定度を高めつつ、金属イオンの酸化を防ぐ工夫が重要であることがわかった。 また、柱状層状結晶の特徴の一つとして、結晶外表面におけるエッジサイトの占める割合が大きいことが挙げられる。拡散反射法を用いて結晶外表面近傍のOH伸縮振動に由来する吸収帯を近赤外領域で評価することで、柱状結晶と板状結晶の拡散反射スペクトル間に有意な差を検出できた。柱状層状金属水酸化物の水酸基に対する空間分解的な評価に有効な測定系であるといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
錯体の安定度定数や酸化の影響といった金属種を変化させる際に考慮すべきパラメータを収集できた。また、柱状層状結晶の特徴の一つである豊富なエッジサイトに対するキャラクタリゼーションに有効な測定系を構築できた。いずれも今後の柱状層状物質の合成法の深化と機能開拓につながる重要な知見であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き適用可能な金属種の拡張とそれを通じた柱状化の進行条件の理解に取り組む。錯体の安定性を高めるため、配位子濃度や配位子の種類を検討する。また、既に柱状化を報告しているニッケルやコバルトの系に対して、過飽和度の制御により柱状結晶のアスペクト比やサイズをより自在に制御するための溶液条件を見出す。さらに機能開拓の一つの方向として、柱状層状金属水酸化物のエッジサイトを材料設計に活かすため、その反応性を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度購入予定のポテンショスタットの価格が想定よりも高額であったため、今年度の物品費を抑え次年度に重点的に物品費を配分することにした。
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