研究実績の概要 |
本研究では最近我々が見出した「金属錯体を原料とした過飽和度制御による層状水酸化ニッケルの異方成長法」をベースとし、「層状物質の柱状化」という新たな物質設計コンセプトの実証を目標に掲げている。この目標達成に向け①柱状層状物質の合成方法の深化および発展と②柱状化が及ぼす物性変化の活用および理解に取り組んだ。 最終年度では、金属錯体を原料として合成した柱状層状水酸化コバルトのサイズやアスペクト比の制御性を検討するために、アミン系配位子としてN,N’-dmedaを使用し、[N,N’-dmeda]/[Co2+]を変化させた際の結晶形態の変化を評価した。サイズとアスペクト比の独立した制御には至らなかったが、錯体の安定性を調整することで、柱状形態のまま平均粒子サイズを変化させられた。さらに、ニッケルを用いた場合と同様に、結晶成長時の過飽和度が比較的高くなる溶液条件が積層方向への異方成長に重要であることがわかった。また、柱状結晶の機能開拓に向け金属水酸化物の表面水酸基の反応性を検討する中で、ビス(トリメチルシリル)スルフィドと水酸化物を反応させることで、形態を保ったまま結晶外表面の硫化反応が進行することを見出した。 このように本研究期間を通して、金属-ジアミン錯体を用いた過飽和度制御に基づく柱状層状金属水酸化物の合成方法を、組成や形態の制御性の面で発展させられた。また、柱状化に伴う表面水酸基の状態の変化や外表面の反応性に関しても知見を得た。今後ジアミン錯体にとどまらず金属イオンのリザーバーを広く検討することで、柱状層状物質の一般的な合成法としてさらに発展し、層状物質を用いた材料設計に新たな展開をもたらす可能性を秘めている。
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