研究実績の概要 |
本研究では、ハイエントロピー硫化物ナノ粒子の合成指針を確立し、革新的ナノ材料を創製すること、および多元素化が硫化物ナノ粒子の物性に与える影響を触媒特性中心として調べることを目的とする。硫化物ナノ粒子は、多様な構造を持ち複数の反応サイトを有することから革新的な触媒材料として注目を集めている。金属ナノ粒子に見られるように、硫化物ナノ粒子においても多元素化による新規物性の発現が期待できるが、合成難易度の高さからこれまでほとんど報告例がなく、その物性については知見が乏しい。本申請研究により創出される革新的なナノ材料によって、触媒・材料開発の自由度が広がり、更なるナノ材料科学の飛躍・展開が期待される。 2023年度は、2022年度の結果を踏まえ多元素金属硫化物ナノ粒子の合成法改良と詳細な構造解析を行った。ホットインジェクション法を用い、Co,Ni,Nb,Mo,Wからなる多元素金属硫化物ナノ粒子の合成を行った。XRFとSTEM-EDX解析の結果、得られたサンプルは狙い通りCo,Ni,Nb,Mo,W元素が一様に固溶した多元素金属硫化物を形成していることを確認した。またXRDとHAADF-STEM観察による構造解析の結果、得られたサンプルが2H-MoS2層状構造を有し、厚み1,2層程度のナノシートを形成していることが分かった。これらの結果を踏まえ、2024年度は触媒評価を中心とした物性評価を実施予定。また得られた新規物について各元素の詳細な電子状態の測定や、さらなる多元素化についても検討予定である。
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