1. 細菌集団を観察するための培養デバイスの作製。大腸菌集団の観察のために、寒天パッド下で、寒天の乾燥を防ぎながら細菌を培養するデバイスを3Dプリンタを用いて作製した。細菌層を二次元的に閉じ込めるための寒天パッドの硬さを厚さを調整した。 2. 顕微鏡画像から細胞の配向情報の抽出。集団が立体化する箇所を観察するために、焦点面ごとに画像を取得できる共焦点顕微鏡を用いた。取得した明視野顕微鏡画像から、細胞の配向情報を得るために構造テンソル法によって解析した。細菌二次元集団において細胞の配向情報を得ることができた。 3. 観察の対象とする細胞外マトリクスの変更。当初の計画では、大腸菌の代表的なマトリクスの一つである Curli というタンパク質を研究対象としていた。Curli の生産が誘導されるのは、飢餓条件下である。この飢餓培養下では細菌は細胞分裂を2回ほどで止めてしまい、顕微鏡視野を細胞が埋め尽くし、トポロジカル欠陥において遺伝子発現に十分な力学的ストレスを起こすほどの細胞生育は期待できないように見られた。そこで、研究開始直後にアップロードされたプレプリントを参考に、著者らに連絡を取り、力学的ストレスによって誘導される細胞外マトリクスの遺伝子に対するレポーター株を手に入れた。現在はこの株を用いて、細胞配向による力学的ストレスと集団内の不均一なマトリクス発現について調べている。 4. Curli 生産株の培養環境。上記の一方で Curli 生産細胞をウェル型の小さな空間に閉じ込めることで、少ない細胞分裂回数でも細胞同士が押し合っている培養条件を見出すことにも成功している。今後は上記のコラン酸を対象とした解析を進める一方で、Curli に関しても飢餓や細胞衝突といった細胞へのストレスがある条件下でのマトリクス生産誘導の研究を進めていく予定である。
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