研究課題
動物の種の多様性はその運動の多様性によって加速されてきた。一般に運動の出力には正しい感覚の入力が必要とされる。そのうち嗅覚は危険情報や食べ物、またはパートナーを探す上で必須であるために、最も重要な感覚の一つである。特に多様性の激しい植食性昆虫にとって、自分の宿主が発する匂いを正しくかぎ分けることが必要とされるために、嗅覚受容体の進化は早く多様化が激しい。本研究は嗅覚受容体をモデルとしてどのように機能進化が生じるかを研究している。本研究では微生物食であるキイロショウジョウバエ、コフキヒメショウジョウバエ、植食性のキイロヒメショウジョウバエ(以下ヒメと呼ぶ)をモデルとして用いている。これまでの私自身の電気生理学的手法を用いた研究から、嗅覚受容体Odorant receptor 42a (Or42a)がヒメの宿主であるアブラナ科の匂い物質マスタードオイルに強く反応することを示している。本年はヒメのトランスクリプトーム解析によってOr42aが嗅覚器官において強く発現していることを明かにした。続いて、AlphaFoldを用いてOr42aの3D構造を予測し、機能進化に貢献したかアミノ酸の候補を見出した。さらにこれらのアミノ酸を置換したキメラOr42aを作製し、機能解析を行うことで、たった二つのアミノ酸の置換が機能進化を引き起こしたことを明かにした。以上の結果をカリフォルニアで開催されたAmerican Physiological Society学会で発表し、Traverl Awardを獲得した。また結果の一部をBrandeis大学のPeraez博士に提供することで、博士が先導するbioRxiv論文に共著者として貢献した。
2: おおむね順調に進展している
微生物食ショウジョウバエ、植食性ショウジョウバエ用いた研究はともにおおむね順調に進行している。
これまでに嗅覚受容体のキメラを作製することで順行的な機能進化の結果を示すことができた。今後は逆行的な機能進化も同様に示すことができるかを解明するために、進化後のOr42aに逆行的なアミノ酸置換を施し、機能解析を行う。さらにOr42aを発現するニューロンが投射する脳領域がヒメで拡大しているかを示すために、ニューロビオチンを逆行的に注入し、Or42aが支配する脳領域を染色する。これらを通して、植食性ショウジョウバエのOr42aの機能進化またその重要性について解明し議論する。
高価な機器を購入する可能性があるために、次年度に繰り越した。
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bioRxiv
巻: - ページ: -
10.1101/2023.03.16.532987
http://www.noahwhiteman.org/
https://biology.ucdavis.edu/people/santiago-ramirez
https://orcid.org/0000-0001-6110-1794