研究課題
近代農業では、農地に多量投入されたアンモニア態窒素肥料が土壌細菌により過剰に硝化(アンモニアから硝酸へ酸化)されることで、温室効果ガスや水質汚染など深刻な環境問題を引き起こしている。この課題に対し、適切に硝化を抑制する方法が求められている。2009年に熱帯牧草の根浸出液から単離されたブラキアラクトンは、硝化を強力に抑制する(80%硝化抑制濃度:11 μM)ことから、新たな硝化抑制剤としての期待が持たれるが、天然からの単離量はごくわずかであり、化学合成による供給もその構造の複雑さから容易ではない。また、天然から3種類のブラキアラクトン類縁体が単離されており、わずかな構造の違いにより、硝化抑制活性が異なることが明らかとなっている。そこで、詳細な構造活性相関研究を行うことで、より強力な硝化抑制活性を持つブラキアラクトン類縁体が獲得できるのではないかと考え、これらの化合物を合成するルートの確立を目指し、研究に着手した。昨年度はブラキアラクトンのC環セグメントを合成し、分子内シクロプロパン化による7員環構築を検討したが、望む化合物を得ることはできなかった。そこで、本年度は合成ルートを変更し、合成したC環フラグメントから側鎖を伸長した後、最も重要な合成課題である8員環構築を、6員環形成を伴う分子内Diels-Alder反応により行う計画を立てた。現在はDiels-Alder反応の前駆体合成を目指し、必要な側鎖の導入まで完了している。今後は前駆体の合成と分子内Diels-Alder反応による8員環構築を通してブラキアラクトン類縁体の合成を目指す。
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Toxicon
巻: 237 ページ: 107539
10.1016/j.toxicon.2023.107539
https://www.agr.nagoya-u.ac.jp/~organic/