本研究では、ヒト毛髪細菌の採取部位別の分布および新規採取法の開発を目的としている。令和4年度に実施した主な研究内容は下記のとおりである。 1. ヒト毛髪細菌の採取部位別の分布 被験者12名を対象に毛髪を5ヶ所から採取し16Sアンプリコン解析を行った。門レベルおよび属レベルでの占有率を解析の結果、被験者間では主要細菌のすべての門・属で有意差があった。一方で、毛髪の採取部位間では、いずれの主要細菌にも有意差はなかった。また、Weighted UniFrac distance値を用い細菌叢形成に及ぼす寄与度を解析した結果、「被験者」の違いは細菌叢形成に統計的に有意に影響する一方で、「毛髪の採取部位」の違いは影響しなかった。 2. ヒト毛髪細菌の新規採取法の開発 綿棒にて毛髪表面を擦り取るスワブ法にて採取したサンプルと、切断した毛髪本体を用いたサンプルの2種類を用意しDNA抽出後、16Sアンプリコン解析を行いその違いを比較した。また、頭皮のサンプルもスワブ法により採取し、同時に解析を行った。細菌コピー数定量の結果、スワブ法でも10の3乗コピー数以上と一定数の細菌が定量された。さらに、被験者15名のシーケンスデータを用いたβ多様性解析の結果、採取法が異なっても同一被験者間のサンプルは類似する傾向が見られた。また、頭皮サンプルも含めて細菌叢の類似度を比較した結果、いずれの被験者においてもスワブ法にて採取した毛髪サンプルは毛髪本体から採取したサンプルの細菌叢に類似した。
|