病原糸状菌Bipolaris maydisにおける正常な子嚢胞子形成にはセプチンが必須である。申請者はこの研究の際に本菌においてMSUD(meiotic silencing by unpaired DNA)が生じていることを見出した。また、MSUDを抑制する手法を開発したことにより、蛍光タンパク質を用いて子嚢内で機能するタンパク質の局在解析を可能にした。本研究はセプチンとその制御因子および子嚢胞子形成に必要な因子をRNA-seq解析により抽出すると共に、それら因子の局在解析を行うことで子嚢胞子の分子発生メカニズムを明らかにすることを目的とする。前年度までにRNA-seq解析に先駆けて子嚢菌酵母や他の糸状子嚢菌の研究をもとに、子嚢胞子形成に関与する遺伝子を探索および同定し、本菌におけるそれらホモログの機能解析を行った。またRNA-seqを行うための交配試験の条件検討を行った。本年度はさらに候補遺伝子の解析およびRNA-seq解析を実施した。 1)候補遺伝子の破壊株の中から子嚢胞子形成に影響が見られたものについて、いくつか局在解析を行った。その結果、子嚢内もしくは形成途中の子嚢胞子に局在する様子が観察された。 2)MSUDを回避するために異なる交配型のセプチンCdc10蛍光株を作出し、交配試験に供試した。その結果、MSUD抑制株と蛍光株の交配の場合は正常な子嚢胞子を形成できるが、蛍光株同士の交配では正常な子嚢胞子が形成できないことが明らかとなった。 3)RNA-seqを実施するにあたり、偽子嚢殻に内生する子嚢および子嚢胞子の観察を行った。その結果、交配開始日からの経過日数によるおおよその子嚢および子嚢胞子の発生段階を特定した。この結果をもとに偽子嚢殻からRNAを抽出し、RNA-seq解析を実施した。
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