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2022 年度 実施状況報告書

遺伝子組換え不要のゲノム編集リンゴ作出に向けた基盤技術開発

研究課題

研究課題/領域番号 22K20586
研究機関国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構

研究代表者

根岸 克弥  国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹茶業研究部門, 研究員 (50964003)

研究期間 (年度) 2022-08-31 – 2024-03-31
キーワードゲノム編集 / リンゴ / CRISPR/Cas9 / 果樹
研究実績の概要

これまでのリンゴでのゲノム編集技術は遺伝子組換えを必要とするため、本研究では、ゲノムに組み込まれず自己複製する環状化DNAを用いた発現系のリンゴへの適用と、再分化促進因子を利用したゲノム編集個体の再生・選抜系の確立により、遺伝子組換えを必要としないゲノム編集系の開発を目標としている。
環状化DNAの利用について、本年度はジェミニウイルスの一種である、ダイズ黄色矮化ウイルス(BeYDV)由来の配列を利用したベクターを構築して、植物細胞内で発現系の環状化が可能であるかを検証した。Cas9およびgRNAの発現系を含む一体型ベクターをリンゴに導入したところ、リンゴでもDNAの環状化が確認できた。しかし、環状化の効率が低く、またゲノム編集による変異導入が確認できなかった。BeYDVのゲノムサイズは4 kb程度であるが、構築した一体型ベクターは20 kb以上であったことから、環状化の効率が低い要因としてベクターサイズが考えられた。そのため、各発現系を異なるベクターに搭載して、複数の小型ベクターを用いる系を作成して、機能を検証している。
再分化の促進については、近年、再分化を促進する因子であるWUSおよびBBM1と、CRISPR/Cas9を組み合わせたゲノム編集手法が様々な植物種で報告されている。リンゴにおける相同遺伝子であるMdWOX4-2とMdBBM1も再分化促進能を有することが明らかにされたため、これらの遺伝子をリンゴで過剰発現させる発現コンストラクトを構築した。当初は上述の一体型ベクターに、これらの再分化因子を同時に搭載するシステムを構築したが、ゲノム編集による変異導入・再分化ともに確認できなかったため、発現系を分割して小型化したベクターを作成した。また、BeYDVの配列を用いてこれらの再分化促進因子も環状化して発現量を向上させる系を構築した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

環状化して自己複製するベクターについては、BeYDV由来の配列を用いることで、リンゴ細胞内で発現系を環状化・増幅できることが示唆された。再分化促進因子については、他の植物での利用実績などから、リンゴで効果的な因子の候補を選抜できている。一方で、これらのベクターについては、研究当初はアグロバクテリウム法を使いリンゴに形質転換をおこなうことで効果を検証する予定であったが、アグロバクテリウム法による形質転換体の作成効率が極めて低く、定量的な検証が十分にできていない。また、一体型ベクターではベクターの環状化の効率が低く、十分に発現量が増幅できていないと予想された。その要因としてベクターサイズが原因である可能性が考えられたため、小型ベクターの再設計やその効果の検証が必要となった。本年度はこれらの予備実験を優先したため、リンゴでのゲノム編集個体の作出には至らなかった。

今後の研究の推進方策

小型化したベクターを用いて、DNAの環状化や増幅を確認して、効果的なゲノム編集酵素の発現系を確立する。また、アグロバクテリウム法による遺伝子導入の効率が低い問題については、リンゴでの形質転換に成功している研究者からの助言を受けつつ培養条件の検討を進めると同時に、アグロバクテリウム法に変わる手法としてパーティクルガンを用いたリンゴへのDNA導入法を検討する。ゲノム編集の標的としてはPDSなど、変異体を選抜しやすい遺伝子を標的としてAmplicon-seq法での変異効率の検出の実施を目指す。また近年、変異体で再分化が促進される遺伝子がリンゴで報告されたため、PDSなどの標的と同時にこれらの遺伝子にも変異導入を行うことで、より効率的に変異体を得られる可能性を検証する。

次年度使用額が生じた理由

再分化促進に関わる因子をRNA-seq法で探索する計画を立てていたが、近年報告された有力な因子がリンゴでも使用できる可能性が高いため、RNA-seq.および人工遺伝子合成にかかる費用が当初の予定より少なくなった。また、ゲノム編集個体の作出と変異解析を次年度に行うことになったため、これらの費用を次年度使用額となった。

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公開日: 2023-12-25  

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