木材腐朽菌にはリグニンを効率的に分解できる種が存在しており、本菌群の菌体外酵素が高分子リグニンの分解に関与すると考えられている。これまでに、白色腐朽菌において人工リグニンの分解が促進される培養条件の探索が行われてきており、高酸素濃度雰囲気下や培地組成が高C/N比であることなどがその条件として挙げられている。先行研究より、木材腐朽菌のリグニン分解メカニズムに酸化還元酵素が関与していることは明らかであるものの、その他酵素の寄与については明らかになっていない点が多い。本研究課題では、プロテアーゼと共通点を有する担子菌ユニークな新規菌体外タンパク質に着目した。本タンパク質は既知のプロテアーゼと同様の触媒アミノ酸残基を保持しており、加水分解酵素活性を有することが強く予想された。また、信頼性の比較的高い三次元立体構造モデルを生成し、解析したところ、触媒アミノ酸残基がタンパク質表面に露出していることが示唆された。加えて、C末端側にリンカー領域および機能未知の延長配列と推測されるアミノ酸配列を有するパラログも存在することが明らかとなった。酵母菌を用いて複数個の当該タンパク質を異種宿主発現させて部分精製し、市販の試薬を用いて、低分子のモデル基質を探索したところ、本報告書の作成時点で加水分解酵素活性を確認できる結果は得られていない。今後、モデル基質となり得る低分子化合物を調製することを視野に入れ、当該組換えタンパク質の更なる機能解析に取り組んでいく予定である。
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