昨年度は,CT画像群から間隙構造を解析するプログラムを開発し,一つの琉球石灰岩コアを対象に間隙構造分析を実施した.今年度は60コアを対象に構造解析を実行し,間隙率や間隙の連結性を示す連結確率を含む間隙特性を統計的に評価することに成功した.また,昨年度は間隙クラスターの体積のヒストグラムが幅広く分布していることから,地下水が通過する間隙流路の幅の多様性を考察したものの,今年度はフラクタル性の観点から評価を試みた.具体的には,得られた3次元間隙情報にBox counting法を適用することで,間隙構造の自己相似性を明らかにした.つまり,琉球石灰岩内部には速度スケールの大幅に異なる地下水の流動経路が存在し,幅広い流速分布を示すことが示唆される.この流動特性を数値シミュレーションによって明らかにするため,一つのコアをマイクロX線CTにより撮影することで,55.5μmの解像度を有する間隙モデルを構築し,有限要素法により非圧縮性粘性流れを解析した.フラクタル性の評価結果の通り,解析から得られた流速分布をみると,速度スケールの大幅に異なる流路が混在していた.また,シミュレーション結果から取得した流量情報を用いて,地下水の通りやすさを示す透水係数を計算すると,方向によって推定値が異なっており,最大で3オーダーもの差異があった.この結果から,琉球石灰岩の透水係数は強い異方性を示すと推察される.また,昨年度実施した沖縄県にあるギーザ地下ダムでの単孔式希釈試験の結果から,石灰岩帯水層の流速が深さに応じて大幅に変動する状況を捕捉していた.当該データは今年度,対象地下ダムの水循環モデリングのキャリブレーションデータとして活用され,地下ダム帯水層における地下水の流動経路の同定の一助となった.
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