トマト果実成熟の判断指標となる開花後有効積算温度や果実成長のパラメーターには、過去の知見を基にした数値が用いられる。しかし、果実個体間のバラつきが大きく、個々の果実に起こる現象を直接数値化し、変数として活用することで、より正確に収穫時1果重や催色時期の予測等が行え、出荷調整や栽培管理に活用できる。 本年度は、①果径の経時データを用いて収穫果実1果重の高精度推定、②果実成長データを活用した摘果処理による収穫果実サイズ制御、の各試験を実施した。①については、2022年8月から2023年4月に栽培したトマト3品種、および2023年8月から2024年4月に栽培したトマト1品種を用いて精度の推定を行った。開花後日積算温度500℃、または、800℃までの果径の経時データを説明変数、収穫時1果重を目的変数として学習させて収穫時1果重を推定するモデルを作成した。その結果、開花後日積算温度500℃までのモデルの推定誤差は18%、開花後日積算温度800℃までのモデルの推定誤差は9%で、果実肥大初~中期に1果重の推定を行うことが可能であった。また、複数の品種で本技術が有効であることを確認した。 ②については、2023年8月から2024年4月に栽培したトマト1品種を対象にして試験を行った。①のモデルを用いて果実肥大初期に果実成長が小さいと推定される果房についてのみ摘果し、出荷規格M~Lのサイズの比率を増加させられるかを検討した。その結果、摘果により出荷規格の割合を制御することができた。 一方で、果実果径のセンシングについては、果径を推定することは可能であったが、その果径と果房段数を紐づけることに関して課題が残った。この課題が解決されることで、果房段ごとの果径データの自動取得が可能となり、本技術の利用が促進されることになるとになるため、引き続き手法の開発を行う予定である。
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